川原と智美はどこに組織の人がいるかを検討して街中を歩いて捜索していた。
川原「目撃情報が多いけど…実際現場がばらついてんだよな…」
日差しが容赦なく照り付ける。
あまりに暑いため、川原はスーツのジャケットを脱いで持ったまま左肩に掛けて、智美はジャケットの袖を捲っていた。
智美「でも起こってるのはこの市内です。どこかに共通の入り口があるはずだと…」
川原「それか…複数…あるいは…ないのかもしれない」
人ごみが多い商店街を歩く。
道行く人たちは日傘をさしたり、タオルで汗を拭いたり、ドリンクを飲んでいたりしていた。
智美「ない?…それって…」
川原「魔界の奴らは自動的に魔界に戻れるとしたらという可能性があるかもしれない」
智美「だとしたらどうやって…入れば」
川原「そうなんだよな…」
智美「それだとしたら…捜索しても…」
川原「…あの四天王の生き残りのとこ行くか」
二人は引き返して隆博と俊亮のところに向かうことにした。
川原の車に乗ると車内は嫌がらせのように暑かった。
川原「人が居れる温度じゃねえな…」
とりあえず先にクーラーを入れた。
運転席に川原が、助手席に智美が乗る。
川原「なぁ智美」
シートベルトを締めながら川原が訊いた。
川原「能力で一番悲惨だったときってある?」
智美「…今それ訊きますか…」
智美もシートベルトを締める。
川原「いや、執行命令とは言え…不安定になって能力が暴走するなら効き目の変動もあるのかと思ってな…」
智美「…大学の時に1人。完全に執行命令ではありませんでした。私の勝手な意思です」
川原「意思で動いたのはその時だけ?」
智美「…はい。吉村さんに関しては執行命令です」
吉村は前に新人イビりをする先輩がいて、智美が執行したため精神に異常をきたしたため隔離入院になった人。
川原「あれも執行命令だったのか…あいつのせいで何人も気を病んでとか辞職もいたからな」
智美「先輩がお見舞い行ったんですが…私の名前聞いた瞬間暴れだして即拘束になったみたいです」
そこそこ車内が冷えてきた。
川原はエンジンを掛けて車を発信させる。
川原「あいつそんな罪重かったん?」
智美「重かったです。もう長くないかもしれないので」
川原「…わかんの?」
智美「執行した後に精神に異常をきたしたで終わらないんです。その後がまだあるんです」
川原「例えばどういう結末になんの?」
智美「一番重い罪は…自ら死を選びます…どんな不可能な状況にあっても必ず自らの死を実行することになります」
川原「…普通の人間でも死後大罪となる自殺を余儀なくされるってわけか…他にはあんの?」
智美「精神に異常に伴い徐々に記憶を無くす、五感のどれかが使えなくなる、言葉がわからなくなるですかね」
川原「一番軽い罪は?」
智美「一番というより比較的って表現が正しいかもしれませんが…回復不能な病が併発ですね。回復不能とはいえ死ぬとは限りませんが…それを一生持ち続けることになりますので…」
本来鬼の番人が動くのはけっこうの罪であって比較的軽い罪だとしても大罪に扱われる。
智美は窓の外を見た。