フェイルアワー
T.[](1/16)
 現実。楽しい日常が現実であれば、苦しい日々も現実
 何をどう足掻いたとしても、現実は常に目の前にある。
━静寂。

私はそれが居場所かもしれない。

机のライトスタンドが放つ肌色の薄明かりに、照らされたひっそりとした空間。
それ以外は発光するものは無く、その灯りだけがこの部屋に温もりのようなものを感じさせる。


この部屋は普通一戸建ての個室より少し広いくらいだろう、
床は深い焦げ茶色のフローリングで、同じ材質で型どりされたベッドに本棚、ドレッサー、クローゼット…
そんな家具達が私の部屋を、更に素朴な雰囲気を創り出している様だ。




カチッ…
カチッ…





少し古い型のレトロな振り子時計の、太く低い音がこの部屋の空気を時間と共に確実に刻む。
その音に耳を澄ませながら、私は椅子に座り、木製の机の上に小さめのノートを開いた。

あの日からいつもの日課になっていて、そろそろ新しい物も必要になりそうだ。

唯一の机のライトスタンドの明かりだけを頼りに、左手に鉛筆を持ち、そのノートに綴り始める。


***************


2112年10月5日。

今日はいつも通り、学校の授業を終え、家に帰宅した後、この街の徘徊へと再び廻った。

今日も何も無いだろう、と、安心して帰っている途中、久しぶりに奴に出くわし、襲われていた男性の身も確保を優先しながらも、なんとか退治に至り、一息。

だが、そこに居た男は突然気を失い、私は介護するため私の家へと運んだ。

しばらくして男は目を覚まし、動揺しながら私に次々へと、不可思議な質問を投げ掛けてきた。
私も信じがたいのだが…それが正しいのであれば無理もない。
恐らく彼は…

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