はんぶんこ
[愛してる](1/2)

「新郎様、ご準備が整いましたよ。」

スタッフの一声で夏希が振り返る。
あたしを目にした夏希は、

「うわ………やばい、あゆな綺麗過ぎる。」

と感激の眼差しで少し涙目だ。

「夏希君こそ、すごいカッコイイよ。」

あたしも夏希を見て惚れ惚れする。


あたし達は帰宅して二ヶ月後結婚式を挙げた。
それは本当に身内だけの家族婚。
結婚して直ぐ夏希の仲の良い友人先輩後輩とは
小さなお披露目会を済ませていたが、
結婚式はそれなりに貯金してから
まだしていなかった。



「ご両親がお見えになりました。」

あたしの両親がやって来て、
それと共に夏希は先に部屋を出た。

「父さん、母さん長い事待たせて
ごめんねやっと晴れ姿見せれたね。」

あたしは両親と三人になり、そう言って
笑顔で二人を見ると、二人共目を潤ませていた。

「歩奈、綺麗だよ。」

父親がそう言うと、あたしも一気に
目頭が熱くなる。
そしてこれまでの事が走馬灯のように
思い出されていく。
両親との最悪だった関係のあの頃のことも
両親が変わって、大事に支えてくれた事も

「泣くのはまだ早い行こう、歩奈。」

父親がそう言ってあたしに手を伸ばす。
あたしはその手を取り

「うん。」

と涙を堪え、父親と歩き始める。
チャペルのドアの前で、あたし達は待機して、
ドアが開き、まず母親にベールを下げてもらう。

そして父親と、夏希の元へ歩く
のだが、堪えていた涙は案外直ぐに溢れ、
夏希までのバージンロードをあたしは
泣きながら歩いた。

「夏希君、泣き虫な娘ですまないね。」

そう言って父親は夏希にあたしの手を受け渡し、
席へ戻る。

「あゆな、泣き過ぎ。」

夏希はそう言ってあたしの手を握る。

「だって。」

あたしはスタッフさんにハンカチを渡され、
拭いながらそれでも涙は溢れる。



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