はんぶんこ
[誰だって生き苦しい](1/21)

祖母と話をして、学校はとりあえず
休むことにした。行く気にはなれなかった。
両親に辞めさせる、と言われたが
本音はそれでも良かった。

家に閉じ込められるのが嫌なのと、
頭ごなしに怒声を浴びせられたり
学校で騒がれるのが嫌だったが、
学校に対して未練はなかった。

ただ、まだ学校を辞めてどうするのかとか
どこかに転入するのかとかは考えられず、
ひとまず数日ゆっくり考えてみようと思った。

「歩奈が行きたいなら送って行くし、
遠慮しないでおばあちゃんに甘えなさいね。」

祖母はそう言ってご飯の支度を始めた。
あたしは家では全くしなかったが
それを手伝い、祖母は嬉しそうに
料理の仕方を教えてくれた。

あたしが生まれて初めて作った
不格好な卵焼きも、切り方がバラバラな
肉じゃがも祖母は美味しいと何度も
言いながら食べてくれた。

家では母親とそういう機会はなく、
授業くらいでしか料理はした事がない。

「おばあちゃん、料理色々教えて。」

あたしがそう言うと、祖母は

「いいよ。
あの彼に作ってあげなきゃね。」

と微笑む。
あの彼祖母は夏希を彼氏だと思っている。

「夏希君は彼氏じゃないよ。」

あたしは思わずそう言ったが、

「大切な人でしょう?
歩奈の彼を見る目がそう言ってたわ。」

と祖母は変わらず笑顔で言う。
たまにしか会った事ない祖母
年の功なのかあたしは驚いた。






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