ウサギトオオカミ
[Prologue](1/1)





「可愛い」


「可愛い」


「可愛い」






周りから何度も何度も言われ続けた。



この恵まれた容姿のおかげで



あたしの人生はいつだってイージー。



小さい時からずーっとね。ふふん。




でも大きくなるにつれてこれじゃダメだって。


もっともっと色んな人に愛されなきゃって。



たとえ彼女持ちだろーと、


どうしようもねえクソヤローでも、


すっげえオッさんだとしても、



可愛いと言われるために



あたしは更なる可愛さを求めて


絶対に努力を惜しまない。




だって可愛いための理由ってみんな同じでしょ?


愛されるために。


寂しさを感じないために。



それだけのこと。





あたしは特に欲張りなだけ。





みんなみんな


あたしのことを


愛しくなって愛しくなって


狂ってしまえばいいのに。




「可愛い」ってもっと言って、


もっともっと頂戴!


まだまだ全然足りないの


だからもっと!!






そんな貪欲だったあたしが






「お前、


ウサギみたいで


可愛いな」






たった1人の嫌いな男に愛されたくて



ついに可愛いと言われた時の感情が




どうしてこんなにも



怖くて



むかつくくらい



心臓がドキドキするんだろう。










- 1 -

前n[*]|[#]次n
/31 n

⇒しおり挿入


[編集]

[←戻る]