ESCAPE
04[背徳](35/45)





「…… ふふ、くすぐったかった?」


 からかうように言うと、慎矢は恥ずかしそうに伏し目がちに僕を見つめた。


「僕はね…… ここ触られるの好きだよ」


 慎矢に掴まれた手を引いて、自分の胸の尖りに触れさせた。


「…… 伊織……」


 慎矢の指先は、遠慮がちにまるで壊れものでも扱うように、胸の尖りに触れる。

 目を閉じて、父さんの愛撫の感触を思い出すと、その優しすぎる刺激は物足りなかった。


「…… 慎矢、もっと強く触っていいよ」


 もっと無茶苦茶にして、僕が粉々に砕けてしまえるくらいに。

 僕の言葉で火が付いたのか、慎矢がそこに貪りつくように覆いかぶさってきた。

 敏感になっている尖りを、舌先で押し潰されて、強く吸い上げられる。 父さんの姿を思い浮かべると、痺れるような痛みが快感に変わる。


「…… っあ…… ぁ…… もっと強くして……」


 慎矢は僕の求める通りに、さっきよりも強く、そこを何度も愛撫してくれた。


「…… 慎矢」


 慎矢の髪に指を挿し入れて名前を呼ぶと、慎矢はそこを愛撫しながら上目遣いに僕を見る。


「…… キス…… したい」


 キスは嫌いな筈なのに、気が付けば僕はそんなことを口走っていた。

 慎矢が上体を伸ばして、お互いの熱い唇が重なり合う。

 慎矢の舌を咥内に誘い、唾液を送り合いながら、僕は目を閉じてあの人を想う。

 慎矢の広い背中に腕を回し、抱きしめると、慎矢もしっかりと僕の身体を抱き返してくれた。


 ―― ああ…… とても暖かい……。


 何のわだかまりもなく、父さんにただ愛されていると思えるような、そんな気がして。

 ほんのひと時だけど、相手が慎矢だということも忘れて、僕は必死に彼の身体を縋るように抱き締めていた。


 ―― 父さんとひとつに繋がりたい。


 そう思うだけで、身体の奥が熱く疼く。


「慎矢、僕を上にさせて」


 逞しい腕に抱きしめられて、慎矢は身体を反転させて僕の願いを聞いてくれる。

 ベッドヘッドに置いてあるボトルを取り、ローションを指に纏わせる僕を慎矢は下からじっと見上げていた。

 僕は慎矢に微笑みかけて、そのまま覆いかぶさるようにして唇を重ねた。

 お互いの熱い息を混じらせながら、僕は自分の後孔に指を伸ばす。


「…… ん…… ぁ……」


 そこに指を挿し入れて、先を急ぐように中を解していく。 合わさった唇の隙間から、甘い吐息を漏らしながら。

 僕の行為に気付いた慎矢は、腕を伸ばして僕の双丘を優しく両手で撫でてくれる。


「…… ん……、」


 閉じた瞼の裏に浮かぶ父さんの繊細な指先に、優しく触れられている気がして、僕の半身は次々と透明の雫を先端から零し始めていた。




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