心臓に消えない痣を
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*野菊
「血の繋がらない妹なんて重荷なだけでしょう」
当たり前のように私にお酒を差し出しながら、
カウンターの向こうで千茅くんが煙草を吸いながら言った。
「義理の兄弟のせいで人生が滅茶苦茶になった女を知っているわ。早く捨ててしまいなさい」
「出来ないよ。大切だもの」
「馬鹿ねぇ、だから言ってんのよ」
千茅くんの吐き出した煙が辺りに漂う。
苦い顔をしながら千茅くんが言った。
「あの子と暮らし始めて・・・三年ほどだったかしら?
自分が死ぬことを分かっていて、後にアンタが独り遺されることを知っていて、
それでもあの子を引き取ったレイコが、アタシにはどうしても理解出来ない」
都と私。年の離れた姉妹。
私たちは血が繋がっていないのだ。
都はママが育った児童養護施設、”あおぞら“が廃園するという時に、
一番最後に残された子だった。
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