心臓に消えない痣を
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いつものように都を保育園に送ってから学校へ向かう。
変わり映えしない通学路。
私と同じ白いセーラーが揺れる。
この辺りでは名門とされている私立高校のものだ。
『馬鹿な女に価値があるとでも?』
元々母が行かせたがった高校だ。
その余裕があるくらい、母の店は繁盛しているように見えた。
けれども母が死んで、もう学費を払い続ける余裕がない。
行く必要もないから行かなくていい。
そう言った私に、明郷さんはそう言った。
学費がどうなるか知らないが、明郷さんが行けと言ったのだから明郷さんがどうにかするのだろう。
けれどもいずれは、私が払うことになる金だ。
私が制服を着るよりも、都をきちんと学校に行かせたい。
望むところに行かせてやりたい。
母が望んだことでもあったから。
「野菊」
聞き慣れた声が私の名前を呼んだ。
学校生活の中で私を呼ぶのは一人しかいないことを知っている。
「おはよう」
昴(すばる)。学校の中で唯一、母の葬式に出席した人。
「・・・おはよう」
彼との関係は、いつもうまく言葉に出来ない。
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