私のカレはモデルでダメな彼氏です【高校生編】 -毎週更新-
[scene19 コンテストD ネット投票](1/1)


コンテストが終わり、会場に集まっていた人達は解散していた。

私とアキちゃんとヤマトは、ユウとリュウジを待つため、しばらく会場に残っていた。

ネットを確認すると、すでにコンテストの動画が配信されており、ネット投票も始まっていた!

「ここに載るだけでもちょっと有名人だな」

ヤマトが羨ましそうに動画を見ていた。

モデルというよりも、有名人になりたいなら、きっと他にも方法があるよ、ヤマト。


私達以外の入場者は、誰もいなくなり、とうとう3人だけになったが、会場のスタッフは片づけに忙しく、私達に誰も帰りを促す人はいなかった。

「私達もそろそろ出ようよ。近くのスタバでユウくん達を待っていようよ」

真面目な性格のアキちゃんは、私達が残っていては、スタッフの人達に迷惑がかかると思い、退場を提案した。

「そうだね!ユウにLINEしても返って来ないし、たぶん打合せか何かしてるんだね!」

会場を後にした私達は、近くのスタバに入った。
時計は16:00をまわっていた。

「バック転なんて、よくやるよな」

ヤマトはコンテストの動画を見ながら言った。

そこにはユウのバック転が映っていた。

「ヤマトくんも何か秘策を考えてたの?」

大好きなレモンティーを飲みながら聞くアキちゃん。
お行儀の良いアキちゃんが、ストローを口にくわえながら話す姿は、初めて見た。

「ウォーキングに必死で、そんなことまで考えてなかったよ」

ヤマトらしい回答。
でもウォーキングは1番練習していただけに、1番上手かった気がする。
素人目線だけれど。

「リュウジに負けたのが1番悔しいな!」

心底悔しそうに言うヤマト。
でも素直に負けを認めているのが偉い。

「投票差は分からないけれど、ヤマトくんも絶対いい線いってたよ!」

「そうそう、ウォーキングも1番上手かったと思うよ!」

確かにいい線はいっていた…はず。
敢えて言うなら、あの輪廻─ロンド─のメンバーの直後の出番だったのが、ヤマトの不運だった。


ネット投票の投票期間は、明日の24:00まで。

途中経過は非公開で、最終結果だけが、その翌日に開示される。

会場に来ていない人達の票は、コンテストのHPで、編集された動画を見て投票する。

やるべきことは全てやった。
あとは、結果を待つだけ。


「どこにいるの?」


やっとユウからLINEが来た!
ユウをスタバに呼び出し、すぐに合流した。
リュウジはそこにはいなかった。

「おつかれさま!とりあえずこれ飲んでよ」

ユウの到着に併せて、ユウの好きなブラックコーヒーを頼んでおいた。

「…ありがとう」

「ユウ!どうだった!?あの後」

コーヒーを飲み終わらない内に、ヤマトは話の横槍を入れた。

「ああ…トニー事務所に所属することになった」

「なにっ!?ホントかユウ!!やったな!!」

ヤマトは自分の事のように喜んだ。
事務所に所属ということは、モデルになれたってことでいいのかな…?

「まずは期間限定で。1年契約で、結果が出なければ更新しないそうだ」

「すごいね!ユウ!まだコンテストの結果が出てないけど」

「決勝に出たメンバーは、みんなモデルにスカウトされてたよ。リュウジも同じ。コンテストはそれが目的だったのかもね」

「これからが楽しみだな!」

「とにかく、おめでとう!」

「…ありがとう」

ユウはいつも通り表情がなかったけれど、きっと嬉しいに違いない。

コンテストの結果なんて、もうどうでもよくなってきた。


*******


ユウがコーヒーを飲み終わり、外を見ると、日も大分落ちかけていた。

「じゃあ気をつけて帰ってね!アキちゃんも今日はありがとう!」

「私も楽しかったよ!ユウくん、頑張ってね!ヤマトくんもまだまだチャンスきっとあるよ!」

「ああ、すぐユウに追いついてやるよ!モデルの仕事決まったらすぐ連絡しろよな!」

濃い長い1日が終わり、それぞれ帰路に着いた。
ヤマトとアキちゃんと別れて、ユウと2人だけになった。

「マネージャーの人とか決まったの?」

何かを考えている様子のユウの横顔に、何を考えているのか当てたくなった。

きっとこの先のモデルのことに違いないが、まるで違うことを考えているのかもしれない。

「ああ、岐部さんって言って、遠藤マサトのマネージャーだよ」

「あの人!」

「そう、あの人。リュウジも同じで、コンテストに出たメンバーはみんな岐部さんじゃないかな」

「あの人マネージャーだったんだね!もしかしてやっぱり、あの人がユウの事推してくれたのかな?」

「さあ、どうかな。あの日の事は、一言も出なかったけど」

「まあ、みんなの前では言えないよね」

「来週の火曜日に、早速事務所で打合せがあるんだ」

「火曜日!?コンテストの結果が出る当日じゃん!早いね!じゃあホントにコンテストは関係ないんだね」

「そうだね。あれは単なるイベントだな」

涼しい顔で言うユウ。

なんだか、ユウが少しずつ遠い存在になっていきそうで、怖くなってきた。

ユウならきっとモデルで成功して、有名な芸能人になって、忙しくなって私なんかとはもう会ってくれなくなっていくのかな。

芸能界なんて、私なんかよりキレイで可愛い子なんて、いっぱいいるし…。


「…どうした?」

急に黙った私を、のぞき込んでユウが聞いた。

「わっ!なに?何でもないよ」


でもユウが目指す夢に、私は応援したい。
頑張るユウを、応援したい。

でも、出来れば、私の傍にいてほしいな…。

今、ユウは私の事も、考えていてくれていたのだろうか…。



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