私のカレはモデルでダメな彼氏です【高校生編】 -毎週更新-
[scene18 コンテストC 決勝戦!](1/1)


輪廻─ロンド─のステージを見ていたら、突然後ろから話しかけられた。

「いやぁ、落選しちまったよ!」

振り向くと、ヤマトがそこに立っていた。

「ヤマト!惜しかったね!」

「惜しいか?他と結構点数差があったから全然届かなかったよ」

ヤマトは悔しそうに言った。

元々、ユウを誘ったのはこのヤマトだ。

モデル志望の動機が一番強かったのは、ヤマトに違いない。

「でもウォーキングとか上手かったし、頑張ったと思うよ!」

必死にフォロー。
だってヤマトだって頑張ったんだから、少しは褒められてもいいはずだよ。

「そうだね…ユウみたいにバック転でもすれば、インパクトは全然違ったよね」

「そう、あれって事前にやるって決めてたのかな?」

「さあな。ユウなら急に思いついて、その場ですぐ出来そうな身体能力はありそうだけどな」

どんな身体能力だよ…。
急に思いついて出来るわけないでしょ。

「決勝戦はどんなことやるのかな?」

アキちゃんが横から質問する。

「特技の披露だってよ」

やっぱり!
私の睨んだ通りね!

でもそうすると、ユウは百人一首になるけれど…。

「特技ならスリーポイントシュートを10回連続で決めてやるのに!」

ヤマトは得意気に言っているが、よく分からないけれど、まあ凄いのかな…?


輪廻─ロンド─のライブが終わり、会場は一時静かになった。

「さあ、皆さん!お待たせ致しました!」

司会が盛り上げる。
輪廻─ロンド─のBGMが流れる。
完全に輪廻─ロンド─のステージだ。

「次のステージは、特技の披露もあります!最初は────!」


紹介されたファーストメンバーがステージを歩き始める。

衣装は予選と同じシックな黒い衣装に、スカーレット色の少し赤みの帯びたジャケットを着ていた。

ステージ上をウォーキングするところまでは、さっきまでのステージと同じ。

ステージ中央に来て、彼はマイクを取り出し、BGMに合わせて歌い始めた!


ううん…まあまあ上手いかな?


しばらく歌った後、ウォーキングしてステージを終えた。

どうやらステージ中央で、特技の披露があるらしい。

次に現れたメンバーは、特技披露でシャドーボクシングをしていた。

男らしさという意味で強さをアピールしたのかな?
実はボクシングワールドチャンピオンとか?
あんなに体の線が細いのに、そんなわけないか。

会場は、特技披露では一定の盛り上がりを見せる。

ただ、シャドーボクシングの彼より、歌を歌った彼の方が盛り上がりがあった。

まあ、どちらかというと、歌の彼の方がイケメンだったけれど。


順番的に次は輪廻─ロンド─のメンバーか、ユウのはず。

ドキドキする。
ユウ、頑張れ──────!

アキちゃんも順番を分かっているのか、少し緊張した表情だ。

次に出てきたのは─────


ユウだ!
ユウが出てきた!

「頑張って!!」

力いっぱい声を振り絞る!
隣のアキちゃんも、後ろのヤマトも声を張り上げる。

ウォーキングをし、ステージ中央に立つ。

ユウの特技は百人一首。

あそこでどう表現するのだろう。

そう思った一瞬、会場のBGM、ライト、全ての設備の電源が落ち、真っ暗で静かになった。

それまであった歓声も、突然の出来事に静かになった。

これは─────演出?

一筋のライトだけが、ユウに降り立ち、ユウを照らす。

何が始まるんだろう─────?

そう思ったとき、ユウの独唱が始まった。

しっとりとした、バラードだ。

そして、結構上手い。

ユウって歌上手かったっけ…?

そういえば一緒にカラオケ行ったことなかったな。

しばらくユウの独唱が続く。

ただ、百人一首と何か関係があるのだろうか?

しっとりとしたところ…?

ただ、心の奥に届くような、印象に残る歌声だ。

会場は歌声を聴くように、静かだ。

そして、独唱に区切りがあったかと思うと、会場は明るくなり、BGMが流れる。

ユウはまた、ステージ中央で、私の方に向かい、少し笑顔を見せたかと思うと、くるりと反転し、会場から消えた。

会場は少しずつ歓声が沸く。

今のユウの演出は、不可思議な、なお且つ何も無かった一瞬間だったように、過ぎ去った。

「吉と出るか、凶と出るか…」

ヤマトは呟いた。
ヤマトは今の演出を、知っていたようだった。

今は何も聞かないでおこう。
後でゆっくりユウに種明かししてもらおう。

そんなことを考えていると、次はリュウジが出てきた。

ということは、最後はやはり輪廻─ロンド─メンバーで締めってことね。

リュウジの特技はダンスだった。

キレのあるダンスだったけれど、やはりさっきのユウの演出に対しては、インパクトに欠ける。

ただ、特技中の盛り上がりは、一番な気がした。

さすがリュウジ。

「リュウジくん、格好よかったね!」

アキちゃんはリュウジのことは知らないはずなのに、リュウジについて褒めた。

「リュウジは、うちの高校の生徒だよ」

「えっ!?そうなの!?」

口を抑えて驚くアキちゃん。
驚いた顔が、ちょっと可愛い。
これまで黙っててごめんね。

リュウジがステージから消えた後、輪廻─ロンド─のメンバーが登場し、会場の盛り上がりは最高潮に達した。

輪廻─ロンド─のメンバーは、ウォーキングもせずにそのままステージ中央に立ち、ソロで歌い、踊り出した。

会場がさらに盛り上がる。

今までの全ては、このために準備されたことのように、整った行程表を、輪廻─ロンド─が体現しているかのようだった。


決勝戦はネット投票も含まれる。
単純に会場での盛り上がりが、投票数に比例しない。

輪廻─ロンド─メンバーだって、もしかしたら抜けるかもしれない─────

ユウが勝つには、どうしたらいいのだろうか。

輪廻─ロンド─のソロステージが終わり、会場はその余韻に浸っていた。



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