私のカレはモデルでダメな彼氏です【高校生編】 -毎週更新-
[scene16 コンテストA 予選投票](1/1)


10人目のモデルがステージを歩き出す。

出場者全員、同じ黒い衣装に身を包んでいた。

ジャケットのようなものを着ているが、薄い生地が体のラインを出しており、黒い色が一層個性を埋没させている。

最も個性を出せない服装で、それぞれ勝負させているような演出だった。

「まだかな?」

アキちゃんも気持ちが焦るのか、少し興奮した感じで聞いてきた。

「もうすぐじゃないかな!」

そう応えた直後、歓声が一気に上がった!

「えっ!?何っ?」

アキちゃんも私もなぜ歓声が上がったのか分からなかったが、11番目のモデルを見てすぐに分かった。

トニー事務所人気グループ“輪廻─ロンド─”のメンバーの1人が、11番目のモデルとして登場していた。

彼がモデル経験者かどうかは分からないけれど、すごい歓声の中、颯爽と歩く姿は、さすが人気グループの風格が備わっていた。

そして彼はステージ中央に立つと、バック転をして場内を沸かせた。

何もかもレベルの違いを見せつけられた私達は、今までのモデル達が、素人の集まりでしか見えなくなっていた。

────まあ、それはそうだけれど。

11人目のモデルの輪廻─ロンド─メンバーが去ると同時に出てきたのは、ヤマトだった!

「あれ!ヤマトくんじゃない!?」

アキちゃんは興奮気味に指さした。

「ヤマトぉー!!」

力いっぱい叫んだ!

しかし、輪廻─ロンド─メンバーの歓声の余韻があり、私の声はステージに全く届かなかった。

事前にウォーキングを練習していたこともあり、緊張した様子も見せず、ステージを歩き切った。

そして、ヤマトと入れ替えにステージに現れたのはユウだった!

「ユウ!」

思わず声が出た。

少し緊張しているのか、ウォーキングにぎこちなさがある。

──────頑張って!!

心の中で、必死に応援した。

「ユウくん!!頑張って!!」

隣りでアキちゃんも叫ぶ。

ユウはステージ脇まで歩き、ターンしてステージ中央に立った。

少し間が空いたと思った瞬間────

バック転した!!

ユウの突然のハイパフォーマンスに、場内は一瞬ざわめいた。

着地後に片膝ついて、スッと立ち上がったかと思うと、何事も無かったかのように歩き出した。

ざわめきは一瞬だったが、会場内の人の記憶には残ったことだろう。

ユウは、去り際、こちらを見て、少し笑った─────気がした。

「ユウくん、すごい!」

アキちゃんの興奮は、私まで伝わってきた。
きっとアキちゃんは、ユウを見に来たに違いなかった。

ユウと入れ替えにステージに入ってきたのは、リュウジだった!

リュウジはヤマトやユウと比べて、とてもクールな印象を与えた。
冷静な歩き方の中に、確固たる自信が垣間見えた。

リュウジが終わった後、10人程出てきて、予選は終わった。

「終わったみたいね」

会場内の音楽が変わり、明るくなった。
参加者は一斉に、スマホをいじりだした。
これから15分以内に、指定された投票アプリにて、投票をする。

参加者1人につき、モデルを2名まで投票できる。

これは11番目のモデル、輪廻─ロンド─のメンバーも対象であるから、実質、2番目の投票を誰にするかで、次の決勝投票進出が決まる。

でも私は、もちろん、ユウとヤマトに投票した。アキちゃんも同じ。

あとは、結果を待つだけだった。


ユウならきっと大丈夫─────


根拠はないけれど、そうとしか思われなかった。



- 16 -

前n[*][#]次n
/24 n

⇒しおり挿入


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[編集]

[←戻る]