私のカレはモデルでダメな彼氏です【高校生編】 -毎週更新-
[scene9 マサト](1/1)


「遠藤マサト」

突然ユウが口走った名前は、聞いたことのない名前だった。

あれから次の日、ユウは少し嬉しそうに私に話しかけてきた。

何かそんなにいいことがあったのだろうか。

「トニー事務所所属の読者モデル。何誌も専属モデルをやっているけど、芸能人ではないから知名度は低いな。俺も知らなかった」

「へぇ。その人もコンテスト出身者なの?」

「そう。5年前の同じコンテストに合格してる。この人は今日の夜、渋谷である雑誌の撮影をするらしい」

「そうなんだ!そんなところまで情報を掴んでるなんてすごいね!」

「いや、そうやって彼のツイッターに載ってただけだよ」

ユウは別にこんなことは何でもないとでも言うように、無表情に切り返した。
でも無表情に見えただけで、内心どこかワクワクしているようにも感じた。

「じゃあ学校終わったら行ってみようよ!ヤマトも誘ってさ!」

「そうだな」

そう言うと、ユウはいつも通りに、鞄から何やら本を取り出し、読み始めた。


よく考えたら、今夜はユウと渋谷デートってことだ!

ヤマトを誘おうって言わなければよかったと、いまさら後悔。

渋谷なんていつ以来だろう。

高校生に人気のある街なのに、ほとんど行かないのは、ユウが渋谷に関して全く関心がないからだ。

ヤマトなら何度も行っているに違いない。ユウと対称的に、流行りものが好きだからだ。

「ヤマトは来ないんじゃないか。そういえばあいつ、もう部活休めないって言ってたからな」

やった!
ユウと二人だけの方が嬉しい。

「じゃあ二人で渋谷いこうよ!」

「そうだな」

ユウは本を読みながら応えた。

私と渋谷デートより本ですか…。

ただ無神経なだけなのか、それとも私のことは何とも思っていないのか…。

こんな感じの態度だと、ちょっと自信無くしちゃうな…。

まあとにかくこれでデートが決まったわけだし、良しとしようと思う。



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