私のカレはモデルでダメな彼氏です【高校生編】 -毎週更新-
[scene7 特技](1/1)


下校時間。

英語のテストなんて出来るはずもなく、隣でポケットに手を突っ込んで歩いているユウは、昨日と同じく100点だったらしい。
全くどういう頭しているのだろうか。

「ふたりとも!ちょっと待って!」

振り向くと、ヤマトが急いで追いかけてきた。

「あれ?ヤマト、部活は?」

「今日は休んだ」

「いいのか?来月、県大会じゃなかったのか?」

「1日ぐらいいいの。先生にも言ってあるし。それより、朝のコンテストの応募用紙書きに行こうぜ!」

何故かヤマトがノリノリ。
明るくて何事も積極的なのが彼のいいところだった。
それに対して、その正反対なのが私のカレだった…。

「またその話か」

すでに面倒くさそうである。
ヤマト、頑張れ!

「とりあえず応募してみようぜ!俺一人だと寂しいしさ。応募しないなら、付き人でいいよ。俺の芸能人デビューにぜひ立ち会ってくれよ」

ヤマトが懇願。
そんなに芸能人になることに夢を持っていたなんて知らなかった。

「付き人って何だよ。お前がそこまで言うなら、俺もやってもいいぜ。ただし、様子みて、おもしろくなさそうなら、すぐ辞めるぞ」

やった!
とりあえず一歩進んだ!

「よし!決まりだな!サオリちゃんも良かったね!」

「ユウもヤマトも絶対受かるよ!」

本当に受かると思う。
ユウは話さなければ、誰にも負けないぐらいイケメンだ。
むしろモデルという職業は、ユウにはうってつけなのかもしれない。

「頑張ろうな!ユウ!」

張り切っているのはヤマトで、ユウは依然あまり乗る気ではないらしい。

「とりあえず応募用紙書かないとな」

「ネットでも受け付けてるって書いてあったよ。また駅前の喫茶店で書こうよ」


店に到着。
マスターがココアとコーヒー2つを運んで来る。
今日はアルバイトが休みらしく、マスターしかいない。

ココアとコーヒーが運ばれてくる間に、応募項目はスラスラと進んだ。
スマホからネットに繋ぎ、項目を一つずつ消し込んでいった。

「特技…?」

「モデルはただ写真取られるだけなのに、特技とか必要なのか?」

「さあ…今後の芸能活動のためだろ」

読者モデルなのだから、その後必ずしも芸能人になれるとは限らないのだけど、盛り上がっているから、横から水を差すのを止める。

「単語の暗記」

「そんなテキトーな感じでいいのか?」

コンテストで、きっとこの特技の披露もあるんじゃないだろうか。

「投票するのは女性だから、女の子がキュンとくるような特技の方がいいんじゃないかな」

「お、サオリちゃん、いいカンしてるね!」

「特にないな」

考える素振りもなく、ユウが答える。
この人、やっぱりやる気ないな…。
それに対してヤマトは、腕を組んで考え込んでいる。

「俺はやっぱりバスケだな!3ポイントシュートが得意って書いておこう」

確かに運動が出来る男子は得点が高い。
バスケだろうと、サッカーだろうと良いと思う。

「ユウは?」

「特にないって」

「特にないって書いたら落選だろ。何かあるだろ。サオリちゃん、考えてあげてよ」

さっきから考えているんだけど、私もユウの特技が分からないでいる。

この人、いつも何に打ち込んでいるんだろう。
ユウのことは好きだけど、実はユウのこと、知らないことの方が多いんじゃないかと、少し不安になった。

「勉強!」

ヤマトが思い出したように言った。
今日も英語100点だったしね。
でも勉強が得意ってハードル上がるね。
東大でも入れる人が言うセリフだよね。

「ユウは落ち着いているから、インテリな感じで攻めた方がいいんじゃないか?」

「それはアリかもね!」

「でも勉強が得意って何かムカつく奴だな」

確かに。
もう少し謙虚な特技の方がウケはいいはず。

「じゃあ百人一首は?」

「なにそれ?お前、そんなの覚えてんのか?」

ヤマトは信じられないというような感じで答えた。
ユウは本が好きで、昔の文学にも精通し、百人一首なんて昔からソラで言える。

…よかった。ユウのこと、知ってることの方が多いみたい!

「花の色は うつりにけりないたづらに わが身よにふる ながめせしまに」

不意にユウがそらんじた。

「何だそれ?」

「小野小町。俺が1番好きな歌」

「いいね!百人一首にしようよ!女子は和歌にあるような微妙な感情ものが好きなんだよ」

盛り上がっていたら、ココアがすっかり冷めてしまった。



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