母の日記


3父のこと (1/1)




私の父は、とにかく昔気質な亭主関白な男。
酒にタバコに賭事。

私は絶対に父のような人とは結婚したくない。

『将来はパパのお嫁さん』なんてことは子供ながらにも、思ったことがなかった。

だから自然と思春期には父を煩わしく思い、大学は父から離れたくて県外の大学に進学した。

母も父には苦労させられた。

義祖母と父は、よく口論していて母はいつも仲介役をせざるを得なかった。

昔話をするとき母は、結婚した当初は何度も実家に帰ろうと思ったと言ってた。

父は我が儘だ。
本当に我が儘で自分勝手。
自分の思い通りにならないと気がすまない人だ。

私が知る限りでも、家出は数十回。
一週間口をきかないなんてことは、ざらだった。

母は、知らず知らずのうちに父を怒らせないように気を使っていた。
もちろん義祖母にも気を使わなければならなかった。


私はそんな父が嫌い。

母が癌になったと聞いた時から、なんで癌になったのが父じゃなくて母なんだと神様を恨んだ。

酒やタバコもする我が儘な父はピンピンしていて、酒もタバコもしない真面目な優しい母が病気になるなんて不公平だ。
理不尽すぎる。
どうしても納得いかない。

ただひとつ、父の名誉のために付け加えるならば、父は浮気と借金だけは絶対にしなかった。

そして嘘も決してつかなかった。
嫌、つけない性格だったのかな。

ただ、あまりに正直すぎる性格は、やはり私の目からは我が儘以外のなにものにもうつらなかった。


母を除いては。


母は父をなんだかんだで好きだった。信頼してた。こんな父でも尊敬してた。

だから私も、結局は父を嫌いにはなりきれなかったんだ。




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