日に向かう葵。
[第一章](1/4)






「あれっ、また水無さんだ」

「……すっっっごい偶然、だね。日向君」



思わずしてしまいそうになった舌打ちを飲み込むと、

目の前で嬉しそうに笑う端正な顔立ちに、なんとも言えなくなる。



「入学してからずーっと隣だよね、俺ら」

「そだね、ずーっと隣だね」



感情を込めないオウム返し。

淡白だの、性格悪いだの言って、もう私に関わらなければいいのに。




「あーっ!後ろ、日向君だぁっ!よろしくねぇ♪」

「田中さん。よろしく」

「中田だよーっ!な、か、た!」



前はよりによって、田中さんか。

私に毒を履くよりいくつかオクターブの高い声に、思わず頭を抱えたくなった。



自分の運のなさに、悲しみや呆れはもう3度目の席替えから感じている。


……いや、もうこれは悟りを開いているとでも言えばよいのだろうか、

自嘲気味の笑みは、席替え故のうるさい教室に消えた。



- 1 -

前n[*]|[#]次n
/4 n

⇒しおり挿入


[編集]

[←戻る]