「あれっ、また水無さんだ」
「……すっっっごい偶然、だね。日向君」
思わずしてしまいそうになった舌打ちを飲み込むと、
目の前で嬉しそうに笑う端正な顔立ちに、なんとも言えなくなる。
「入学してからずーっと隣だよね、俺ら」
「そだね、ずーっと隣だね」
感情を込めないオウム返し。
淡白だの、性格悪いだの言って、もう私に関わらなければいいのに。
「あーっ!後ろ、日向君だぁっ!よろしくねぇ♪」
「田中さん。よろしく」
「中田だよーっ!な、か、た!」
前はよりによって、田中さんか。
私に毒を履くよりいくつかオクターブの高い声に、思わず頭を抱えたくなった。
自分の運のなさに、悲しみや呆れはもう3度目の席替えから感じている。
……いや、もうこれは悟りを開いているとでも言えばよいのだろうか、
自嘲気味の笑みは、席替え故のうるさい教室に消えた。