平行世界と霧の街
1章(1/5)


―カナカナカナカナ…

ある夏の夕暮れ時,ヒグラシが鳴く中で楠 直哉は農道を自転車で走っていた。

其れと言うのも妹の奏が,

「キーホルダー,落としたから探して来て!」

と言った事がきっかけだ。

「…ったく,困ったもんだな…探すったって,大体近所は探したし…」

そう呟きながら,一旦辺りを見渡すと,遠くに人影が見えた。

(…あの人に聞いてみるか)

そう思った彼は,自転車をそちらに向けて走り出した。


―だが…此の時点では,彼は自分の行動が此れからの日常を左右するとは思って居なかった。

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