貧乏な私の所に執事がやって来たのですが。
[お嬢様は料理がお得意](2/5)
「鳴瀬に用事はない。荒川、少しこちらへ」
「荒川さん、僕はここで待っていますね」
あいつ、いい子ぶって苗字にさん付けで呼んでやがる。一人称まで僕になって、完全に先生接待モードだ。
用事がないと言われてしまった可哀想な鳴瀬は、 渋々と廊下へ戻ってしまった。

何か私、やらかしたっけな?最近は課題出してるし、態度も真面目なはずだし

荒川、荒川!
「っはい!!」
「朝呼び出してすまなかった、実は荒川に来客が来ていてな」
「来客?」
嫌な予感がする。額からツーッと冷や汗が垂れた。
「そうだ、荒川は一人暮らしで大変だからと親戚がシツジを派遣したそうだ」

??ヒツジ?羊?ジンギスカンの贈り物だろうか。

「ロシアと日本のハーフの、イイトコ育ちの執事だそうだ」
執事?せ、せせ、先生、エイプリルフールはとっくに過ぎましたよ、ハハ」
嘘は言ってない、全て本当のことだ。実際に見た方が早いな

執事。確かにそう言った。執事って、あの、め、召使いみたいなのだろうか?混乱でよくわからない。

「どうぞ、入ってきていいですよ。」


私は、衝撃のあまり口を開けて呆然としていた。

「こんにちは、荒川優様。これから貴女の生活にご一緒させていただく、東城海里と申します。何卒よろしくお願いします。」


執事。マジモンの執事。コスプレとかじゃなくて、本物。

鳴瀬すら霞むほどの高身長。美しいブロンドの髪。 品のある顔立ち。それを際立たせている黒縁の眼鏡。スーツのようなタキシードのような紳士服。黒い革靴に白い手袋。よく見ると懐中時計まで持っている。

本物だ。本物の執事だ。 アニメや漫画の世界からそのまま抜けてきたような、本物がいる。完成された本物の執事が、目の前に、私の名前を呼んで

う、いしき、意識が、遠く、なっ、て……
お嬢様!しっかりなさってください!!お嬢様!」
「荒川!今保健の先生を呼ぶからな!!東城さん、うちの生徒をよろしく頼みます!」
し、つじ?」
「お嬢様!無理をなさらないで、今はそのまま

……その執事とやらに見守られ、私の意識はだんだん薄くなっていった


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