貧乏な私の所に執事がやって来たのですが。
[お嬢様は料理がお得意](1/5)
『わあああぁぁぁあああ!!』
『悠様ぁぁぁぁああ!!!!』

…うるさい。別に今日に限ったことじゃないけど、やっぱりこの学園、うるさい…。


私、 荒川優。貧乏に一人暮らしをする高校生。朝は眠いので気分が良くないけれど、もう一つ気分が良くないのには理由がある。

『悠様!こっち向いてえええええええ!』
「…朝からうっさい、静かにして」
『きゃぁぁぁあ!!悠様が話してくれた!!おはよーございまーす!!!』

悠様、というのは学園の王子様の二つ名を持つ鳴瀬悠のことだ。「鳴瀬悠王子親衛隊」が入学当初から結成されていた。
今は…確か、「鳴瀬悠大帝国 」くらいに大きくなっているかな…。とてつもない財力である。


とにかく、王子様と呼ばれるその所以は、容姿である。というか容姿しかない。
綺麗な黒髪、透き通る白い肌、凛々しい目つき、海を思わせる青い目、高身長、外人のような顔立ち…挙げればきりがないのだ。

性格はというと、 はっきり言って最悪だ。優と悠、漢字は違えど名前は同じだと言って、やたら文句を言ってくる。お前みたいな貧乏人とは違うんだ!とか、名前は同じでもアタマは違うんだな、とか…

腹立たしい。思い出しただけでも。あんなやつが帝国を築き上げ、イケメンの地位を保っているだけでも腹が立つ。


「…はぁ、今日職員室に呼び出しくらったんだった…」
「なんだ荒川、ため息なんかついて。貧乏人らしく悩み事は多いんだな」
「げっ」
鳴瀬だ。こいつ…本当に、どこにでも出てきやがる。

「俺に対してそんなこと言うのか?酷いなぁ、貧乏人はモラルってのが無いんだな」
「うるさい…王国民が嫉妬してますよ、ほら」

『…貧乏人のくせに、悠様と親しく話すとか生意気』
『王子に近づかないでほしい、穢れるんですけど…』

目線の先には、殺意の波動を送る王国民達。

「…逃げるぞ貧乏人、俺はあんな厄介なのと話したくない」
「逃げるなら勝手に逃げたらどうですか?一緒にいたら貧乏が移りますよ」
「つべこべ言うな、行くぞ!」

鳴瀬は私の手を引いて、走って校舎の中へ駆けて行く。そうしているものだから、王国民からは暴言をかけられ、周囲の人からは好奇の目で見られ、本当最悪なことになってしまった。

「ここまで来たら問題ない、職員室行くぞ」
「私一人で行けるんで。ほっといてください」
「貧乏人に拒否権はない。行くぞ」

こうして私の慌ただしい日常は始まるのだ。



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