纏われの薬指
[〈 18 〉: cerisier](31/31)


「もしもし?どうした?」



携帯から微かに男性の声がする。


似た声の人が多くて分からないけど、待田に似ているような気がする。



「え?終わってないのか?それ明日……ああ、分かった」


通話を終わらせた奥宮さんが、申し訳なさそうな顔でこちらを見た。



待田で、合ってます?」


「正解


「お仕事ですか?」


「明日のが間に合ってないらしくて自宅でやってるらしい。手伝いに行こうかと思って」


「是非そうしてあげてください」



待田は奥宮さんだから連絡したんだろうな。


頼り甲斐があって優しくて、信頼出来るもん。



「ごめん家まで送るよ」


驚くほど悲しそうな顔をした奥宮さんについ笑ってしまった。


家に着き、離れてしまった手を涼しく思いながら、去っていく車に手を振った。


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