纏われの薬指
[〈 12 〉: お返しします](2/12)


「この指輪は、お返しします」



すぐに外れたゆるゆるな指輪を、社長の前に叩きつけた。


何度も訪れたことのある社長室。


いつかこうしてやりたいと思っていた。



俺の腕から離れた舞花の眉間には、シワが寄っていた。


気にすることなく社長に鋭い視線を向けると、青ざめた顔がそこにあった。



「申し訳ありませんが、俺は結婚出来ません」



青かった社長の顔が、じわじわと赤くなっていくのが見える。


その隣に立つ副社長は、俺の目をジッと見つめていた。



無駄に広いこの社長室にいるのは、社長と副社長、そして俺と舞花。


4人だ。



この中で圧倒的不利な立場なのは、俺。



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