纏われの薬指
[〈 12 〉: お返しします](2/12)
「この指輪は、お返しします」
すぐに外れたゆるゆるな指輪を、社長の前に叩きつけた。
何度も訪れたことのある社長室。
いつかこうしてやりたいと思っていた。
俺の腕から離れた舞花の眉間には、シワが寄っていた。
気にすることなく社長に鋭い視線を向けると、青ざめた顔がそこにあった。
「申し訳ありませんが、俺は結婚出来ません」
青かった社長の顔が、じわじわと赤くなっていくのが見える。
その隣に立つ副社長は、俺の目をジッと見つめていた。
無駄に広いこの社長室にいるのは、社長と副社長、そして俺と舞花。
4人だ。
この中で圧倒的不利な立場なのは、俺。
- 213 -
前n[*]|[#]次n
⇒しおり挿入
⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?
[編集]
[←戻る]