ドラムセットに恋してる。
7.彼との再会(1/11)
―――……
ばか。
と、
時折思い出しては毒吐いていた。
ばか。
なーにが「おれが負け続けで辞めるわけねえだろ」なのよ。
……辞めちゃってんじゃん。
高校は、やっぱり彼と別々になった。
私は都会の私立で、
彼は普通の公立。
彼は、数学はずば抜けて天才だったけど、他の教科は全くもってダメだったらしい。
本人がテストの度にいつもそう言ってた。
そんなわけで、
高校になってから彼と会える唯一の機会は、吹奏楽コンクールだった。
私は真夏の炎天下の中、
楽器の運搬をしながら彼の姿を必死に探した。
彼の高校の制服を見たときは、心が華やいだ。
演奏前なのに、
何考えてるんだろう。
はっきり言って、
彼と会うことしか考えていなかった。
高1だし。
会えたら何て言おう。
LINEのID交換しよう。
ふるふるしよう。
うん、そうしよう。
けれど、
なぜか彼の姿を見つけることはできなかった。
これこそ本番前に、
もやもやして演奏に集中できない。
私は思い切って、
パーカッションの運搬を傍からみている暇そうな女子高生に話しかけた。
「すみません。
あなたの高校のパーカッションに、下田咲人って男子、いませんか。
中学の時いっしょだったんですけど」
みたいな感じ。
もっとたどたどしく、
尋ねてみた。
けれど、
返事をしてくれた女の子は、きっぱりと言ってくれたのだった。
「ああ、下田くんね。
いたね、いたね、
下田咲人くん。
入ってすぐくらいに吹部辞めちゃったよ。
先輩とモメちゃって。
同じ中学なんだ。
へえー」
ばか。
下田咲人くんの、
ばか。
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