5.最後の文化祭(1/9)
―――……
彼が私の手を握ってくれたから、
私はコンクールで練習通り弾くことができたんだと思う。
高校に入ってからも吹部を続けていたけれど、
何というか……
……張り合いがなかった。
終わってしまったから言えることだと思うけど。
高校では3年生のときあっさりパートリーダーになれたし、
もちろん楽器だって公正に割り振っていた。
なのに、
今でも私がこんなにもドラムにこだわってしまうのは、
明らかに彼の所為だ。
もっと言うと、
下田咲人という人に出会わなければ、
きっと私は今ライブハウスにいなかったかもしれない。
喉が渇いたので、
ライブハウスの隅っこにあるドリンクカウンターに向かった。
カウンターの中に店員さんらしき人は見当たらない。
なのでゆっくりとメニューを見ることができた。
- 46 - 栞
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