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[第3話](1/6)
過去の欠片
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早足で廊下を通りすぎ、部屋の前まで行き扉を力任せに開ける。
そこは、薄暗くゲームソフトやら漫画本やらが床に散らかっている私の部屋。
さっきの勢いをそのままに後ろ手で扉を閉める。
ソフトや本を踏まないようにしてベットまで近寄り、
ぼすんっ
着替えもせずにそのまま頭から布団にダイブした。
羽毛布団のふわふわした感触がくすぐったい。
しかしそんな事を気にするような余裕なんて頭にはなかった。
「――ッ」
ぐるん、と寝返りをうって仰向けになり、腕で目を覆う。
真っ暗な視界の中でさっき私に質問した時の蓮の真剣な顔と声ががんがんと響いている。
……落ち着け、私。
いつかは聞かれるって解っていた事じゃないか。
落ち着け、落ち着け。
荒い呼吸をなんとか鎮める。
しかし蓮の声が、あの真剣な蓮の顔が、脳裏に焼き付いて離れない。
そして、その隣にはもう色褪せてしまった遠い記憶の中の、蓮によく似た少年が。
――わかっている。
蓮はあいつにそっくりだ。
でも蓮はあいつじゃない。
あいつはもういないんだ。
もう、いない、んだ。
「――っ」
遠い過去の記憶。
決して忘れることのない。
「葉末……」
ぽそりと"彼"の名を呟き、意識は暗闇へと落ちていった。
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- 13 -
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