少女遊戯
[プロローグ](1/3)
「これは、酷いな」
庄屋の屋敷の片隅にある洋館の、重く豪勢な扉を開けると、島森警部は絶句した。
夏も盛りのこの日に、吐き気を催す腐臭。
無数の蠅が耳を犯すように羽音を響かせ、蛆が床に跳ねる。
「何だってんだ畜生!」と悪態を吐くと、ハンカチーフを急いで口に宛てがい、目の前を飛ぶ蠅をがむしゃらに腕で払い退ける。
洋館は広く奥行きもあり、奥の壁には大きなルネサンス絵画が掛けられ、中では一人の裸の女が横たわりながら島森警部を見詰めている。
が、その絵画など島森警部には二の次であった。
島森警部は廿年警察を職としていたが、これ程の惨事は初めてである。
右手の壁は所々白いが主に赤褐色であった。それは掌を使って、厚く、何度も塗りたくった様にムラがあった。
部屋の真ん中には大きな食卓が置かれ、その上の天井にはきらびやかなシャンデリヤが輝いている。まるで貴族が晩餐をする食堂のようである。
しかし食卓に掛けられたシーツは赤褐色、椅子も赤褐色、辺りの床も赤褐色。赤褐色なのだ。
唯一、食卓に載っている何かしらの「塊」は蠢く白であった。
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