●[少女と少年](2/11)
ああ、今日も始まるあたしが一日で最も嫌な時間―
「おかえり、茉莉」
男があたしを見て満足そうに言う。あたしはにっこりと微笑む。
「ただいま帰りました。遥様」
「どう?学校は…。辞めたくなったら、いつでも言うといい」
そんな事あるわけない。そう思いながらも顔には出さないで笑い続けた。
「遥様のご心配には及びません。あたしは大丈夫ですから」
「…そう」と言い男が少し不服そうに端正な顔を歪めた。
「茉莉に伝えておかないといけない事がある」
唐突に男が言った。
あたしの髪を優しい手つきでときながらたまに髪に口づけをしている。
「なんでしょう?」
「あいつが帰ってきた」
男が不満げに眉を潜めた。
「綾織さん…がですか?」
名前を口に出すと男は更に嫌そうな顔をした。
「名を呼ぶな、お前が汚れる」
屁理屈にあたしは苦笑いをした。
「良かったじゃありませんか。たった一人の弟さんが帰ってこられて。確かアメリカに留学されていたとか…」
「やめろ。あんな馬鹿と半分血が繋がっている事が僕にとってどれだけ屈辱か…。父上の妨害さえなければ追い出してやっているものの…」
あたしの髪を力の限り握りしめた。髪を引っ張られているから痛い事もないがあたしの髪にあたるのはやめて欲しい。
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