本日は性転ナリ。
[15.203](1/1)
消えたい!


消えてしまいたい!


俺は


俺は何なんだよ


何のために誰のために産まれたの?


気持ち悪い

自分が気持ち悪いッ!!!!!!!!!!!!






その瞬間、段差に足を取られ身体が宙を舞う。

痛っ

手のひらから流れ出る血液がアスファルトへ染み込んでいく




立ち上がる力が出ないや



『えっ?!瑠衣?!どうしたの?!』

声のした方向に顔を向けると、そこにはコンビニ袋を下げた莉結がいた。


莉結の顔が視界に入った瞬間、大粒の涙が溢れてくる。

なんでだろう
胸の奥から熱いものが込み上げてくる感覚を覚える。



だけどごめん。
俺は俺じゃないんだ。

もうこの世界のどこにも居場所が見つけられないよ!!!!!!!

渾身の力を振り絞り立ち上がる。
そしてそのまま莉結の横をすり抜け走りだした。


『瑠衣っ!!!』

その声も遥か遠く、手の届かない処から響いているようだった。

俺は何も考えずに走り続けた。

正確には混乱しすぎていて何も考えられなかった訳だが




ここは


気がつくと目の前には巨大なコンクリートの塊があった。

莉結が昔住んでいた県営団地だ。

無意識のうちにここまできてしまったようだ。

今は誰も住んでおらず、巨大な廃墟と化しているが、つい最近まで人が住んでいた為、荒廃していない。


俺は藁にも縋る思いである部屋を目指した。


あの頃の思い出に触れたい俺を慰めてくれよ

幼い頃の純粋な思い出。

決して褪せることの無い約束。








「りゆちゃーん!!あそぼー!!」

『あ、るいくんはいっていいよ。』

「あれ?大掃除?」

………

「今日はひとりなの?」

『わたし、ひっこすことになった。』

「え?そっかそうだよねおじいちゃんのところ?」

『うん。そう。』

「じゃぁぼくの家と近くなるねっ♪」

『うんだけど、わたしはずっとこの家が良かった

….お父さんお母さんと住んでたから?」

『うん。思い出たくさんだから

「そうなんだ。じゃぁこうすればいいよ。」

『え?なぁに?』

「ぼくが大きくなったらこの部屋に住むからさっ。そうしたらりゆちゃんも一緒に住んでいいよ♪」

『ほんとっっ??ぜったい?』

「ぜったい♪」

『ぜったいのぜったい??』

「ぜったいのぜったいのぜったいのぜったい!」

「『あははははははっ♪』」

ねぇねぇ!』

「なに??」

『じゃぁ約束のチューしよっか♪』

「ったぁー!!むりにきまってるよっ!!!恥ずかしいもん!!」









俺は"203"と書かれたドアの前に立つと、ドアノブに手を伸ばす。

心の中で"開く筈ない"と思いつつもドアノブを引く。

(ガタガンッ)



ふっ都合よく開くはずもないか

そう簡単には俺を受け入れてくれないか。

よく遊んだよなこの階段もこの団地のなかも。


でもあの時から俺は



いっその事、毎日が幸せだった頃の、思い出が詰まる
この団地で人生を終わりにしても悪くないかな


いや終わりにしよう


その時だった。
"タンタンタン"と走る足音が近づいてきた。

まるで追いかけっこをする昔の俺たちのようだ


『るいくんまってぇー!!』

「またないよぉー!!タッチしたらオニ交代ね!!」

「『わー♪ぎゃー♪あはははっ♪…………』」




『瑠衣!!瑠衣!!ねぇ!瑠衣!!』

「んりゆちゃん?ぼく約束守れそうにない。ごめんね….

『なに言ってんのッ?大丈夫ッ?とりあえず下まで降りよっ。ほら!肩かして


幼い頃の俺の声が聞こえる。
『おねぇちゃん。どこ行っちゃうの?ずっとここで遊んでくれるんじゃないの?さっきの約束破るの?』

俺はここにずっと居たいんだよ。

現実には戻りたくないよ

そして、俺の意識はすぅーっと音を立てて闇の中へと進んでいった。


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