本日は性転ナリ。
[6.始まり](1/1)
「なぁ莉結。アイツいつまでついて来んだよ。どうにか帰らせてくれよ!このままだと家までついて来るぞ。」
アイツ(レミ)は、あたかも3人でずっと行動してますよ的な雰囲気で、そのまま俺たちについて来ている。
ただ単に一緒に行動しているだけならまだ可愛いものだが、ニヤニヤと少し後ろをついて来るので気味が悪い。
その時俺の携帯が鳴った。
病院…
「もしもし!元に戻れる準備ができたんですか?!」
『…すまないね。その連絡では無いんだ。"学校"の事だよ。』
「学校…?そんなの行ける訳…
『ないよね?だけど行かなきゃしょうがない。だからこちらから校長に直接交渉して、"転校生"という事で特別に今の学校へそのまま通えるように話を通しておいたよ。
君の事を知っているのは校長だけだから安心しなさい。』
「そんな…なに勝手なことしてるんですか…こんなのでまた学校に通えって?そんなの無理だよ。
こんな事バレたら俺…本当に生きていたくなくなっちまうよ….」
『だが私は、学校に通う事で自分の運命からは逃げずに済むと思うよ。私の経験上、難病を患った若い世代の子で、学校へ通えるのに通わなかった子と、勇気を出して通った子とでは、その病気に対しての免疫が確実に上がっている。まぁ、"学校が好きな子の場合"だけどね。』
「俺にとっての学校……」
学校なんて勉強をしに行くところとしか思っていない。
同じ歳の子供と同じ教室で知識を学び、
教室・学校という"小さな社会"で将来"大きな社会"に出た時の予行練習をする。
その間、青春だの、恋だのがあるはずなのだが。
俺には、その感情がわからないようだ。
特に"恋愛"だ。
1人の異性を特別に感じるという気持ちが分からない。
その人間についての情報量の大小はあっても、…それだけだ。
昔からその感情が知りたくて、恋愛小説や恋愛モノのドラマやDVD、漫画などをよく見た。
しかし何故そこで恋というものが出来上がるのかが理解できなかった。
きっと、それが俺の病気なんだ。
そう思って生きてきた。
…そう思う事で楽になれた。
『瑠衣くん!瑠衣くん!もしもし?』
「あ!すいません。えっと…なんでしたっけ?」
『だから君にも学校へ通って欲しいんだよ。制服はもう届いている筈だから。頑張るんだよ。必ず元に戻す方法を見つけるから。』
「制服って…分かりましたよ。頑張りますね。」
『瑠衣…どうかした?』
「明日から学校通う事んなった。あ、もちろん今まで通り一緒の学校で一緒のクラスだ。」
『はぁ?!それ大丈夫なのぉ?!けど…嬉しいかなぁ♪』
「フォロー頼む。」
『しょうがないなぁ♪まずはその喋り方をやらかくしなきゃね。』
「まぁ、そうだよな…フォロー、頼むね。」
こんな…こんな恥ずかしいもんなのか!!
たかだか何文字か変えるだけなのに…
「そういえばアイツは?!」
『瑠衣が深刻そうだったから空気読んですぐに帰ったよ。』
案外まともなヤツだったのか。
「ふぅー…疲れたぁー…このまま寝てぇー…」
『寝ちゃえばぁ??疲れたら寝るに限るのサ♪』
「ってか無理…起きてられん。また2時間後くらいに起こして…」
『私も起きてたらねぇっ。』
俺はすぐに夢の世界へと吸い込まれていった。
?
なんだろう…
薄く目を開けた時、
確かにそこに"莉結の唇"があった…
….なんで?
俺の、異性に対する感情の欠損について一番理解してくれている筈の莉結がなぜ?
莉結自身も恋なんてした事がないって…
今までそんな素振り見せた事もなかったのに。
俺は動揺したまま硬直していた。
その時微かな吐息のような囁きが聞こえた。
『"衣瑠"…大好き。』
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