本日は性転ナリ。
[3.真実と現実](1/1)
頭が回らない…
目をつぶって、夢であってほしいと心から願い瞼を開ける。
変わらない…
何度かそれを繰り返しても何も変わらなかった。
鏡に映る女の自分を見て一瞬でもドキッとしてしまう自分がムカつく。
ナルシストな奴はこう言う気持ちなんだろうか…
これからはそいうい奴らを温かい目で見守ってあげようと思う。
じゃねぇ!
どうすりゃいいんだよぉ…
この際開き直って女として生きるか?!
無理ダァー…
誰かに相談…
ってか莉結しか話せるやついねぇーーっ!!
けど…いきなりこんな姿で"女になっちゃいました!"って言うのか?!
無理だ。
普通の人なら100%信じない。
いや、待てよ?普通じゃないあいつなら"そーなんだぁ♪"とか言って…
んな訳ねー。
けどここは一か八かだ。
電話…
無理だ…こんな声じゃぁイタ電としか思われねぇよ…
直接会って話すしかないか…
俺は家の前で毎朝ここへ来る莉結を待つ事にした。
きたきたきたきた…!!
頑張れ俺!!!
「お…おはよーっ!!」
『……誰っ?』
そうなるよなぁ…
「俺だよ俺!!瑠衣!!分かんねーよなぁ!これは色々と事情があって….」
『なんで女が瑠衣の家の前にいるの?
また瑠衣のファンっ?』
「いやっ、だから俺が瑠衣で…
『変なこと言わないで。キミ…瑠衣に付きまとうようだったら、社会的にデリートするから。
それだけの覚悟がないなら金輪際、瑠衣に近づかないでね♪ヨ・ロ・シ・ク♪』
デ…デリート?!
ってか何ニコニコしながら脅迫してんだこいつ!!
あーいやいや今はそんな事ツッコんでるときじゃねー!
「おい莉結!!頼むよ!信じてくれっ!」
『ななななんで私の名前まで調べてんのよぉ?!
…こうなったら力づくで諦めさせるしかないわね…』
そう言うと鞄を下ろし軽く準備体操をやり始めた。
ちょっ…こいつ合気道がバカみたいに強いんだよ…
この前も県大会に出場したばかりだ。
仕方がない…"アレ"を言うしかないか。
『覚悟っ!!!』
「203号室!!」
『はぁ?』
「203号室の約束だよ!」
『え?!なんで?!アンタ…本当に?』
「だからそうだっつーの!それを知ってるのは"本物の瑠衣"以外居ねーだろ?」
『いや、だけど…そんなわけ…』
莉結は俺の足元から頭の先までゆっくりと眺めて言った。
『やっぱ無理。ありえないもん!!』
「そんじゃぁどうしたら信じてもらえんだよ!!」
『んー…じゃぁキスして?』
……キス?!
「ッタァーー!!無理に決まってんだろ!!」
『ふふ♪わかった信じるよ♪間違いなく瑠衣なんだね…まだ混乱してるけど…』
「は?!ちょちょちょ待て。なんで今ので信じてくれんの?」
『まぁいいんじゃないっ?信じるものは信じますよぉー♪ところで身体はなんともないの?』
「んんん…まぁそう言うなら。身体は俺もよく分からんけど今んとこ生活面ではなんの支障も無さそうかな!!」
…生活面では…?
何処かで聞いたような…
『そっかぁ。だけど一応病院行った方が…
「あぁぁっ!!!!!!思い出した!!アイツだ!!莉結!!病院いくぞっ!!」
『ふぇーー?!?!』
俺は莉結の腕を引っ張って病院へと走っていく。
この身体は思ったよりも使いやすい事に気がつく。
小回りがきくし、何しろ体重が軽い。
ただ、髪の毛と胸が邪魔なくらいだ。
靴もサイズが合ってないし…
俺は病院に着くなり受付で"如月瑠衣が緊急事態です!!"と伝え、すぐに担当医を呼び出し、一部始終を説明した。
「いい加減俺に病気の事説明してくれよ!!!なんか知ってるんだろ!!」
『すまない。まだ混乱しているんだ。本当にこんな事が起こりうるなんて…』
「こうなる事…わかってたんじゃないんですか?」
場の空気が変わる。
『いや…分かっていなかったといえば嘘になる。
だが君の症状が悪化して女体化するなんて事はあくまで推測や可能性…いや、おとぎ話レベルの話なんだ。
君の病名は"シュールマン症候群"。
2013年、アメリカの"アメリア・シュールマンさん、当時16歳の少女が、突然"男性化"したんだ。
これはホルモンの超異常分泌が原因とされている。
何故そのようになるのかは本当に謎としか言えない。
だが研究の結果。ある特殊なホルモンを定期的に体内に注入することによって、超異常分泌を抑える事ができると判明した。
瑠衣くんに注射していた薬さ。
薬はたしかに効いていたはずだったんだ…
それが3ヶ月前に突然…
力になれなくて申し訳ない…』
「………………いや。わかりました。ありがとうございます。なんか…スッキリしました!!自分の事なんにも分かってなかったなって。
今までのモヤモヤがなくなった気がします。
それで…元に戻れるんでしょうか?」
『….早急に対処するよ。…すまない。』
「…そう…ですか…ありがとうございました。失礼します。」
『瑠衣くん…』
『瑠衣…』
俺は失意のまま病院を後にした。
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