血と夜と月と、
[酒と西瓜と甘味と](1/9)










長かった梅雨が明け、

初夏の風が吹く頃。




暦は文月。




「あっぢぃーーーーーーーー!!!!!」


ぐわわわわわわわーーーー。




「新八さん、煩い。」



暑い暑い煩い新八さんを
総司が睨む。



いや、突っ込むところは
そこではないであろう。




「新八さんの腹の音はどうなっているのだ」



ぎゅるるるならまだしも。

ぐわわわとは…。


新八の腹も進化したものだ。




「って、あー!!!一くんいいの持ってんじゃん!!」


平助が目を輝かせながら
一の手元にあるものを
指差す。


「ほぉ…西瓜か。夏だな」


そういいながら左之さんが
一から西瓜を受け取り、
廊下に置いた。





「結構重いな。こりゃ美味いぜ」

「島田さんからの差し入れだ」

「夏は西瓜と酒だよな!!」

「新八っつぁんは年中酒じゃん!!」

「そう堅いこと言うなって平助!!」




島田さん、とは
島田魁(しまだかい)。

新撰組監察方である。

見た目はごついものの、
中身はとても温厚で優しい。



「冷やしておいて後で皆で食べよう」



「副長!」



気づいたら副長が
私の横にいた。


「…島田さんも気が利く人だよな」


副長が表情を緩めて
そう言った。



「風流な人ですよねぇ」




ちらっと総司が副長を見る。

嫌な予感しかしないのだが。







「まるで土方さんのようですね」


「あぁ!?…っるせぇなぁ!!」


「梅の花一輪咲いても「言うなぁぁぁぁああ!!!!!」





ふぅ……


ため息をつき隣を見ると
一が笑っていた。



「…こういうのも悪くない、な」


「…そうだね」




丸い西瓜も笑っているように









…みえなくもなかった。








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