足許照らす君の歌
15桜色に染まる微笑みと(1/22)
「…ん」
目を覚ますと
目の前が真っ暗だった。
真っ暗なものが一定のリズムで呼吸しているのを見て、目の前に人がいることがわかる。
スゥ、と寝息を立てる音と共に揺れるそれ。
視線を上に向けると、男の人の喉仏。
…この、匂い。は、羽鳥さんのものだ。
羽鳥さんが、目の前で寝ている。
安心する。…落ち着くなぁ。
――そう言えば昨日は羽鳥さんの家に来て、色々お話ししてるうちにそのまま寝てしまった。
ソファでお話ししていたはずだけど、ベッドまで運んでくれたのかな。
まだ夢見心地で、擦り寄ると、
後ろに回された手にギュッと力を込められる。
夢みたいだ。こんな日が来るなんて。
夢なら覚めないでほし…
…あれ。
「現実…」
ムードも何も無いことを割と大きな声で口走ってしまった。
夢か現実か、まだ覚めきってない頭の所為で分別が付いていないけど、
これはまぎれもなく現実だ。
現実かどうかを確かめる手段として、ほっぺたをつねりがちだけど、動いたら羽鳥さんを起こしてしまうからやめておこう。
私は午後から活動を始めるけど、羽鳥さんは何か講義とかバイトとか、予定が無いのかな。
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