足許照らす君の歌
9.空気に溶ける白い旋律(1/27)
《Side 楓》
大学を終えてスタジオに入るなりピアノに座った。
寝起きみたいに呆けた顔をしているのはいつもの事ではあるけれど、今日は輪を掛けてひどいと我ながら思う。
…自分の覚えていない記憶の部分があることって、なんてこんなに気持ちの悪いことなんだ。
こういう酒に手を出してやらかしをするのは3回目で、学習しない。
1回目は大学の友人の前で。
もう大人だし、限界を知りたいとかいう軽い理由だったけど、
限界なんてすぐそこで本当に情けない思い出だった。
2回目は初めのバンドを結成したとき。
それなりにオーディエンスの獲得が出来たと勘違いをして気が大きくなりすぎた。
“今日ならいけるんじゃないか”という謎の意気込みから、まぁすぐに地獄を見た。
ちょっと口数が多くなったり永遠と不満…というか、世の中の不思議に思うこと、疑問を延々とぶつけたり、側から見れば兎に角面倒くさい酔い方しかしない。
…それも自分では断片的にしか覚えていない。
今回はアリサが送ってくれたみたいだけど、何かしなかっただろうか。
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