足許照らす君の歌
4.優しく差し込む橙の陽(1/12)
アパートの外に出ると、タクシーが停まっていた。
羽鳥さんや女の人が使ったまま、待っていてくれたのだろうか。
バタンとドアが閉まり走り出すと、どんどんと小さくなる真山さんの住むアパート。
振り返る気力もない。
きっと今頃は真山さんに裏切られた女の人達が彼を問い質してくれているだろう。
みんな笑うと綺麗な人なのに、ものすごく怒ってた。
無理もないよね…。真山さんのあんな考え方を聞いてしまったら見損なうしかできない。
きっとそれぞれ、彼に想いを寄せていたんだろうな。だけど「知らない事が幸せ」という風にはならない。
言ってしまえば騙してた、って事だし
ちゃんと受け止めて、ほしいな…
「……」
「……」
私の家に向かうタクシーの中では沈黙が続いていた。
真山さんの方を盗み見ると、窓の外に流れる夜景を見ていた。
だけど、未だに手は温もりに包み込まれている。
…本当に助けてくれた。
本当に来てくれた。
ちゃんとお礼、しないとなぁ。
「怖かった?」
そう沈黙を破ったのは羽鳥さんの方。
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