◆それぞれの運命 (1/1)
幻覚の様なものを見たエリが向かう先。
白い外壁の四角い建物…
ただ,小さな建物と思っていた私たちの予想とは違い,意外に大きな建物だったんだ。
周りは幅広い壁で囲まれていて,入口みたいな大きな鉄の門がある…
外からは屋根しか見えなくて,中の様子が何も見えない。
今までの残酷な罠といい…さっきの幻覚といい…このおかしな建物も…何かまだ知らない事がたくさんある気がする…。何が起きてるのかさえ知らない私たちが本当にここから脱出できるのだろうか…?
きっと,私たちは意味を知る必要がある。
エリ「………。」
香里奈「ここは何…なんか気味悪いけど…。」
健太「何があったとしてもおかしくない。今まで危険な目に遭ってきたんだ。でも…ここはたしかに何かありそうだな。」
皆も感じてるのかな…
この変な恐怖感を。
ハキム「ナカニハイロウ…。」
高梨「そ,そうですね…。こんな所でいても日が暮れるだけですし…。」
エリ「じゃあ…開けてみるね。」
私は恐る恐る鉄の門をゆっくりと開ける…
[ギィィィィ………]
そして…
私たちは中の景色を見て驚愕した…
エリ「な,何これ……!?」
香里奈「これってまさか…。」
高梨「が,学校ですよね…。」
白い壁に囲まれた場所…
その中には学校の様な白くて四角い校舎があったんだ…。
健太「なんなんだいったい…。」
舞 「なんでこんな所に学校なんて…。」
エリ「………。」
私たちの中で動揺が広がっていき,そして現実に見えるものを必死に理解しようとしている。
エリ「とにかく…奥に行ってみるしかないよ…。」
私を先頭にして皆で学校の校舎へと向かっていく。歩いていく途中で夕日の光に照らされた古くて錆びた遊具が何個か目に映る…。
ここは本当に学校なの…?
こんなジャングルの中で学校なんて…
不自然過ぎる光景にまた謎が深まっていくんだ。
健太「何でこんな場所に学校があるんだ…。通う人間なんていないだろ…。」
私も同じ気持ちだった。
そして…
校舎の入口の前に立つ私たちに何かを伝えるようにして,入口の上に何か文字が見えた。
【運命は一つではない。自分の力を信じ,裏切るなかれ…。】
エリ「何…この言葉…。」
香里奈「マジで気味悪いよ…。変なカルト集団が通ってたんじゃない?」
高梨「ここは使われてない様ですけど…でもまだ校舎は新しいですね。」
健太「危険はあまりなさそうだな…。罠らしきものも見当たらない。」
私たちは困惑する中で,校舎の入口へと入って行く…
入口から中に入ると薄暗く電気もついていない。
見えるのは長い廊下と入口横にあるドアだけ…
中は外と変わらず全て白い壁で塗られている。
そして…入口横のドアのネームプレートには【STAFF ROOM】の文字が書かれていた。
エリ「スタッフルーム…。」
香里奈「もしかして…。私,見てくるね!!!」
香里奈が何かに気づいた様にしてスタッフルームに走っていき,ドアを開けて入っていった。
エリ「香里奈!!!」
健太「おい!!勝手に一人で行くな!!!何があるのかわからないんだぞ!!!」
健太さんの言葉も聞かずに一人でスタッフルームに入った香里奈。
しばらく静寂が続いた後,スタッフルームから香里奈が顔を出して私たちに言ったんだ。
香里奈「マジでヤバいよ…。最高(笑)この部屋,シャワーがある!!!ベットも!!!しかも食料まで!!!」
なんでそんなに…
まさか何かの罠じゃ…
エリ「香里奈…危なくないの?」
香里奈「大丈夫!一応…ざっと見てみたけど罠みたいなものはないよ。嫌なら私が独り占めするけど(笑)」
健太「使えるなら使うべきだな…。疲れも溜まって限界にきてる…。ここで少し俺達も休むべきだ。」
香里奈「言っとくけど…あんたをリーダーなんて思ってないから。」
健太「ふざけ…!!!」
エリ「やめて!!!ケンカなんて今は必要ないよ!!!私たちは今から脱出する方法を見つけないといけないんだから。」
舞 「エリさんの言う通りです…。」
健太「女の結束力は怖いねぇ〜。わかったよ…。」
私たちは香里奈が入ったスタッフルームの中へと入っていった。
脱出するヒントになるものを求めて…
―――――――――――――――――――
「亜希…君は彼女に何故会いに行ったんだ?」
何故か目を合わせる事ができない…
亜希「………。」
「責めてる訳じゃない。ただ理由が聞きたいだけなんだよ。」
私にもわからない…
なんでエリの所に行ったのかなんて…。
「君だって必要ない事ぐらいわかっているはず…。ここに連れてくる事もあれだけ時間がかかるなんて予想外だったからね。君にとって彼女は救いにはならないんだ。十分わかったはずだろ?」
亜希「はい…。わかってます。ただ,まだ生き残りが一人いたので確認しようと思っただけです。」
「そうか…。ならいいんだ…。疑って悪かったね。君はいい子だ…。私は君をとても愛しているんだ。だから心配だけはさせないでくれよ。」
救い…
私の目には映らないもの…
あなたしか私を救う人はいない。
だから私は彼を愛する事で救いを受けるんだ…
死の運命を見ないために…
―――――――――――――――――――
俺は手がかりを求めて前に進んでいた。
この見える運命を乗り越えるためにも,消えた母さんを探さないといけない。
どんな事があっても…
…………………………………………………
母さんが突然何も言わずに消えて数日が経つ頃…
俺は街中を必死になって探していた。
なりふりかまわず…
でも…全く見つからなかったんだ。
蒸発…?
自殺…?
誘拐…?
失踪…?
頭の中で悪い言葉しか浮かばない。それでも俺は探す手をやめなかった。でも,高校生の俺の力だけじゃ限界があるのも知っていた。
だから,俺は助けを求める様にある人の家を訪ねたんだ。
奈々「琉夏くん…こんにちわ。今日はどうしたの?顔色悪いよ…大丈夫!?」
琉夏「奈々さん…急に来てすみません。母さんがいなくなって何日も経ってて…警察にも連絡したんですけど何もわからないみたいで…。母さんの知り合いと言えば…葵の両親か…奈々さんしか知らなくて…。俺…どうしたらいいのかわからなくて……。」
奈々「琉夏くんのお母さんがいなくなった…?そんな……。とにかく中に入って!!」
どうして俺を一人残して母さんはいなくなったのか…
俺が今まで母さんに迷惑をかけていたせいなのか…?
この俺の目のせいなのか…?
それとも…
俺にはどうしてもわからなかったんだ。
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