◆リーダーの素質 (1/1)
脱出するためにまた前に進むエリたち。それを阻止する様な罠。
私たちは早朝から出発し,また長く広い草道を進んでいく。もちろん両側には有刺鉄線が張られたままで前進しか出来ない状態で…。
この道には木々が存在しない。明らかに何かの目的で人工的に作られた道。それに前にしか進めない様にしてる。この道の先には本当に脱出する場所が存在するのだろうか…?
エリ「………。」
遥 「次の難関まであと少しよ。」
難関…
しばらく歩いた私たちは,また大きな壁にぶち当たる。そして,そこにはまた同じ扉が存在するんだ。
[ガチャ…。]
遥さんが重い扉をゆっくりと開ける。
そして…
また同じ草道の光景が続いているんだ。
遥 「ここが問題の場所よ…。」
エリ「問題の場所って…今まで来た道と何も変わらない気が…。」
健太「草道しかないように見えるが,ここには様々なトラップが仕掛けられている。ここで仲間の大半を失ったからね。地雷よりも恐ろしく死ぬ確率が高い…。」
香里奈「じゃあ…どうやって進むの?ここで立ち止まってる訳にもいかないんでしょ?」
遥 「そう…。死んだ仲間が引っ掛かったトラップまでは進める。ついて来て…。」
そういうと遥さんは先頭に立ち,草道をゆっくりと進みはじめた。そして…私たちも一緒に前に進んでいく。
歩いて行く先々には,人の死体が転がっているのが見えるんだ。
エリ「うっ……。」
地面から伸びた槍の様なもので串刺しにされた男性…
健太「こいつは警備員の西田だ…。いい奴だった…。」
歩く度に見える残酷な景色に恐怖を感じる…
香里奈「なんなのこれ…。」
何か液体の様なものをかけられて,皮膚が溶けた男女の区別もつかない死体が見える。
健太「あいつは美那子…。最悪な死に方だ…。」
こんな事して…
なにが目的なの!!!
酷すぎるよ…
次々に現れる残酷な死体を見ていく中で,遥さんの足が止まった。
遥 「ここで,私たちは諦めて引きかえしたの…。もし私たちに助かる運命があるなら…きっと通る事ができる。」
遥さんが見つめる先には,もう死体はなかった。それはまだこの先にどんなトラップが待ち受けているのか未知数だという事を示していた。
遥 「次の扉まで距離にして半分…。ここからが本当の…。」
香里奈「で…誰が行くの?まさか私たちに行かせる訳ないよね。」
遥 「そうは言ってない…。」
健太「いや…。お前らは新しく入った新人だろ。俺達の貴重な食料まで分け与えてるんだ。先に進むのはお前らに決まってるだろ!!!」
高梨「そ…そんな……。」
エリ「それ……本気で言ってるの!?」
香里奈「じゃあなに!?私たちはあんたたちが脱出するための道を,死んで作れって言うの??まさか,そのための人数合わせだったって事??馬鹿にするのもいい加減にしてよ!!!」
健太「何も知らないガキが…そんな事もわからないでノコノコついて来たのか?」
香里奈「あんたたちマジでクズだね…。こんな状況でもクズは存在してたんだ。道を作りたいなら,あんたが死んで作りなよ!!!男のくせに汚い真似しかできない腐った大人が!!!」
香里奈が怒るのも無理はなかった。私だって同じ気持ちだったから…。まさか,ここにきてそんな事を言われるなんて…私も憤りを感じたんだ。
遥 「違う!!!健太,勝手な事言わないで!!!皆が勘違いするでしょ!!!」
健太「遥…嘘はよくないな。ここに来て,言ってただろ…。引き返す理由は,俺達が助かるために生存者を探すってね…。」
エリ「遥さん…本当なんですか?」
遥さんがそんな事を言う訳ない…
私たちを必死に助け様としてくれたんだから…
遥 「確かに私はそう言った…。でも意味が違う!!!私は少ない人数よりもたくさん人がいた方がトラップを抜ける策だって考えれると思ったの!!!だから…」
遥さん…
健太「へぇ…今更そんな事を言って考えを変えるなんて最悪だな…。遥はリーダーなんだろ?こいつらを行かせるつもりがなかったって言うなら…あんたが先に言って証明してみろよ!!!それとも…怖くて出来ないなんて言うのか?」
舞 「健太さん!!!なんでそんな事…」
健太「お前は黙ってろ!!!遥にくっつくしかのうがないクソ女が!!!」
舞 「………。」
健太「俺達はいいように動かされてたって訳だよ。食料も少ないのに,先に進まず…自分が死にたくないから引き返して生存者を引き込み,またここにやって来る。それが俺達の体力をどのくらい消費してるのかわかってるのか?俺達の体力も限界にきてるんだぞ!!!食料だってあと何日もつかわからない!!!それなのに今更,いい顔しようなんて裏切り行為だ!!!今まで勇気を出して死んでいった奴の方がよっぽどリーダーになるべき人間だったんだよ!!!」
ハキム「ハルカ…ケンタハ,マチガッテナイ…。オレタチハ…ゲンカイダ。」
遥 「私は…好きでリーダーみたいな事をしてる訳じゃない!!!」
エリ「ケンカはやめて!!!そんな事言ったって何も変わらないよ!!!」
どうしてこんな事になるの…
皆,同じ目的に向かってたんじゃなかったの…?
私は人の醜さを強く感じていた。
遥 「いいわ…。私が行くから…。」
舞 「ダメですよ!!!」
遥 「どっちにしても…誰かが先に進まないといけない。だから,これでいいのよ…。」
遥さんが先を見つめたままでゆっくりと前に進みはじめた…。
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遥…
それでいいんだ…(笑)
リーダーの素質は俺が持ってるから安心しろ…
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