◆A WAY OF LIFE (1/1)
それぞれの生きた道。
―――――――――――――――――――
皆と一緒にご飯を食べる私。
いつぶりだろ…
家族みたいにこうやってご飯を食べるのも。
いつもは友達かバイト相手としか食べなかったからなんか変な感じ…
遥 「あなたは香里奈ちゃんだったわよね?」
香里奈「うん…香里奈でいいよ。女子高生やってまぁ〜す。」
高梨「か,香里奈さん…真面目に言って下さいよ…。」
いつも私の軌道修正してくれる高梨…
だから一緒にいるのかもね。
香里奈「これが普通じゃん(笑)高梨は頭が石みたいに固いからねぇ〜!よしよし(笑)」
高梨「からかわないで下さいよ…。」
遥 「仲がいいのね…(笑)あなたも番号があるの?」
香里奈「うん…まぁね。私の番号が見たかったら裸にならないと見れないけど(笑)」
高梨「もう……勘弁して下さい。」
高梨の困った姿を見ると何故か楽しい私。
イジりがいがあるんだよね(笑)
そんな時,私と対角線上に座っていた会社員の男が私に吐き捨てる様に言ったんだ。
健太「こいつらもどうせ同じだよ…ここにいる奴らは皆,番号をつけられてるからね。こんな奴らまで助けないといけないなんて…。食料だってその分減るっていうのに…。」
何,あの男…
あの蔑んだ目……
舞 「健太さん!!そんな事言わないで下さい…。」
遥 「そうよ…。仲間が多い方が絶対いいに決まってる。香里奈……気を悪くしないでね。皆…こんな状況で辛い思いをしてるから…。」
なんなのあいつ…
マジでムカつくんだけど…
クソサラリーマンが!!!
香里奈「私,別に気にしてないから…。」
高梨「あの…皆さんにも番号があるんですか…?」
遥 「えぇ…。でもこの番号が何を示してるのかはわからない。きっと何かを意味してるとは思うんだけど…。」
番号…
そんな事を考えながらご飯を食べていると,私はいつの間にかあのLDのメッセージを思い出していた。
裏切り者の若い女…
裏切り者がこの中にいるの…?
裏切り者って…
本当は全てを知ってる奴がいるとか…
まさかね…(笑)
―――――――――――――――――――
「クゥン……。」
キラが尻尾を振りながら琉夏の所までやってきていた。
琉夏「キラ…お前も腹が減ったのか?これやるよ。」
琉夏が自分の夜ご飯を半分キラにあげている。
エリ「琉夏,それ…。」
琉夏「いいんだ…。こいつは俺にとって親友だから。」
エリ「親友って……琉夏,キラの事を知ってるの?」
琉夏「あぁ…キラは俺と一緒にここに来たんだ。俺の親友として…。でも,俺とキラはフェアな立場でいる。」
エリ「フェアな立場…?」
琉夏がキラを優しく撫でながら言ったんだ…
琉夏「人間や犬とかの壁なんてここでは無意味だから…。俺は,ここに来てから感じたんだ。別に動物愛護団体みたいな考えはないけど…もっとキラも自由であるべきだってね。人間は勝手に犬との関係をご主人様とペット…そして家族だなんて言ってるけど…それはただ自由を奪ってるだけだから。まぁ…俺も親友なんて呼んでしまっててそんな事を言える立場じゃないけど…。でも…キラにはキラなりの生き方があるはずだから。だから,ここではフェアにしてる。人も同じだよ…いつの間にか別のなにかに勝手に生きる道を決められてる人もいる。自分が知らない間に…」
私もそうなのかな…
いつの間にか自分の生き方だって思っていた事も,本当は違うのかもしれない…
琉夏がゆっくりと夜空を眺める。そして,私もゆっくりと同じ景色を見ていた。
琉夏「もしこの世界から人類がいなくなったらどうなると思う?それは時が経つと元の緑がたくさんある自然な世界に戻るんだ。きっと人も自分の周りにあるものを全て捨てた時に,本当の自分を知るのかもな…。」
夜空から見える星たち…
こんな綺麗に見える景色でさえ,私がいた平和で安全な世界と同じなんだ。
きっと,その世界に慣れすぎて…
わからなかったのかな…
自分の生き方が世界と同じ様に変わっていたって事を。
自然の中では,こんなにも人はちっぽけな存在…
沢山生まれる便利なものに頼りすぎて,自分の持ってる力さえ見失ってるのかもしれない。
琉夏の言葉で何かを知った様な気がした…
エリ「琉夏って…不思議な人なんだね。」
琉夏「エリも変わってる…こんな俺と話そうなんて…。ここに来てから,こんなに人と話したのは久しぶりかもな…。」
エリ「琉夏は何歳なの…?若く見えるけど…」
琉夏「18だよ…。なんでこんな事まで…。だいたい空気みたいになるんじゃなかったのか?」
エリ「もう空気じゃなくなっちゃったかも…(笑)ゴメン…。でも,琉夏が私と同じ歳で良かった。私…琉夏とまた出会えて本当に嬉しいし…。最初は怖い人かと思ったけど…やっぱり優しい人だったから(笑)」
私…
何言ってるの…?
自然に自分の想いを言ってる…
何も考えずに。
琉夏「…………。」
それから琉夏はずっと黙ったままだった…。何か私…嫌な事言ったのかな…。深く入り込み過ぎて…何も考えてなかった。
やっぱり,まだ私は変われない自分がいる。
いつもこうやって考えてしまって…
安全な道を選ぼうとしてしまう。
だって…嫌われたくないから。
【忘れてたよ…あなたがいい人ぶる人間だったって事を…】
亜希が言った言葉が今になって胸に突き刺さっていた…
- 20 -
past[*]|[#]future
⇒しおり挿入
⇒作品レビュー
⇒モバスペBook
[
編集]
[
←戻る]