ESCAPE-N[028]…[EYE]ZU-3…


◆2人と2人 (1/1)

エリと謎めいた少年の琉夏。そして…




エリ「やっぱりって…ゴホッ…ゴホッ…。」



喉が痛い…


野宿なんてしたことなかったから,もしかして風邪をひいたのかな。


寒気がする…



琉夏「………ほら。」



彼は背中の荷物から水が入ったペットボトルを取り出し,私に差し出した。



エリ「え……いいの?」



琉夏「ぬるいけど…飲めよ。」



エリ「ありがとう…。」



最初は怖い人なのかなって思ったけど,結構優しい人なのかも。


喉の渇きを強く感じていた私はペットボトルを受け取り,一気に水を飲み干していく…



ゴク…



ゴク…



ゴク…



ゴク…




こんなに水が美味しいなんて思った事ないよ…


生き返った様に感じる。



エリ「ゴメンね…全部飲んじゃっ……た。」



あ…



あれ…



目がおかしい……



ぼやけて…



私…



どうしちゃ………



琉夏「お…おいっ!!どうし………



…………………

……………………………


……………………………


………………



…………………




……… ………………………




【大丈夫なのか…?】





【多分…うまくいくはずです…。彼女が気づくはずがないですから…。生きて帰ってこれる保証さえない環境です…】





【それだと困る…必ず生きてたどり着く事を願うしかないな。】





………………………………



……………………



…………………………





…………………………………………………





真っ暗な世界…



私,目隠しをされてる…



口にも何かを貼られてる…



これは飛行機の音!?



私は何処に連れていかれるの…?



怖いよ……





…………………………………………………





目をゆっくりと開けると…



暗闇の中で小さな火が私の目に映ってる。



エリ「ここは…。」



琉夏「………。」



彼が火を消さない様にして木の棒を動かしながら,たき火をしていた。


もう夜になったんだ。


私,どうしちゃったのかな…


水を飲んで…


それから…



そんな事を考えながら寝ていた私が起き上がろうとすると…



琉夏「まだ寝てろって…。熱は下がったけど今夜は安静にしてろ…。」



彼が私にそう言った。



私,やっぱり熱があったんだ…



エリ「あ…ありがと。」



琉夏「なんで俺がこんな事…。最低な日だよ。」



静かな空気が2人の間を流れる中で,私はたき火の光を浴びながら考える。



彼は何でここにいるんだろ…



私は彼の姿を見ながらそう思った…。昨日から私はこの場所にいるけど,彼はここの環境に慣れてるみたいだし…水も持っていた。


きっと,彼はここが何処なのか知ってるのかもしれない…



エリ「ねぇ…名前……聞いてなかったよね。」



琉夏「………。」



言いたくないのかな…



エリ「私は,エリって…」



琉夏「さっき聞いた…。」



何でそんなにツンケンしてるの?



エリ「じゃあ…あなたの名前を教えて…。嫌だったら別にいいけど…」



しばらく黙り込んだ後,彼が小さく口を開いた。



琉夏「俺は…琉夏。」



エリ「そっか…わかった。琉夏くん,助けてくれてありがと。きっと優しい人なんだね(笑)」



琉夏「俺は別に……。助けたつもりはない…。それに琉夏でいい。くんなんて気持ち悪いし…。」



彼がいる事で昨日までの恐怖をあまり感じない。一人じゃない事がこんなにも幸せだったなんて…



エリ「本当に良かった…。一人じゃなくて……」



安心したせいか…急に悲しくなって私の目から涙がたくさん流れていく。やっと現実を理解したかの様に声をあげながら私は泣いたんだ…



琉夏「……マジかよ。」



私…



これからどうなるのかな…



不安でいっぱいだよ。



私は涙を目に浮かべながら眠りについた…





―――――――――――――――――――





香里奈「ねぇー!!!高梨!!!どうするの?無駄に頭が良いわけじゃないんでしょ?」


高梨「ぼ…僕に言われても…。頭の良さなんてこんな状況で関係ないし…」



コイツどんだけ頼りないの!?



香里奈「あぁー!!!馬鹿!!!もうイライラする!!!いつまで待っても助けなんて来ないじゃない!!!こんな所で私は死にたくないんだけど!!!」



なんで知らないジャングルなんかに!!!



高梨「ぼ,僕だってそうだよ…。香里奈ちゃんだってどうしたらいいのかわからないでしょ?」


香里奈「は!?香里奈?」


高梨「さんでした…。ゴメンなさい…。」


香里奈「なんでだいたい高梨なんかと一緒なの!?意味わかんないし…。」



もう!!誰か助けてよ!!!



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