reverberation 〜残響〜
[出会い](1/29)
白井家は戸惑うことばかりだった。
家には使用人が約10人ほどいて、今まで行ってきた家事は自分がやる必要はなくなった。
服は常に新調され、身に付けるものは全て以前着ていたものより一桁違ったものだった。
そして、なにより変わったのは親子という関係だ。
俺は生まれてすぐ誘拐されたため、新たに出来た俺の両親は常に俺から目を離さないようにしていた。
2つ年下の弟、優(ユウ)には俺とずっと一緒にいるように言っているようだった。
こんなに広いお屋敷で部屋がたくさんあるというのに、優と俺は同じ部屋だった。
優は俺と違って、愛想もよく気が遣えて優しいヤツだ。
友達も多いだろうし、モテるだろう。
それなのに、彼女をつくらないのは俺のせいなんだろう。
俺の前では文句を言わずにいてくれるが、俺が白井家に来たその日、優は両親とケンカをしていた。

「今来たヤツが兄貴?!しらねーよ!なんだよ、守れって!俺自身のことはどうでもいいのかよ!!」

本人も両親も俺に聞かれていたとは知らないだろう。
だけど、聞いてしまったのだ。
そもそも、急に顔を現したヤツが兄貴で、今まで誘拐されてて大変だったから守ってあげて、なんて言われても困るに決まっている。
それも、小学四年生の子どもが背負うべきものでは無いだろう。
結局、両親の説得の末、俺と共に行動することを了承したらしい。
また、学校も行かせられないと両親は言ったが、俺が学校へ行かなくなると優も通えなくなるし、恩人の拓海にも会えなくなる。
そこは、俺が両親に頼み、学校へは行かせてもらえることとなった。
実の弟が実の兄を守るために働く。
素晴らしい兄弟愛と言われてしまえばそこまでなのだが、俺はおかしいと思う。

『アイツなんか大嫌いだ――』

俺は、そう涙を流しながら言った優を思い出し胸を痛めた。



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