春風吹く東海
14.取り憑かれた男.
「本当にごめんね」
船に戻ってしばらくした頃、私はラックに頭を下げられていた。
「まさか船長がそんな危険なとこに連れて行くなんて思わなくて…」
理由はそう、レートの町での大逃走劇を繰り広げた末、くたくたに疲れて帰って来た私を見てラックがアレンを問い詰めたのだ。
そこからラックのお説教タイムが小一時間程あり、そして今に至る。
「やっぱりハルと船長を一緒に行かせるべきじゃなかったよ」
「まあもう終わった事だし、結果的には無事に帰って来れたんだからもういいよ」
そう言って私は苦笑した。
まるで自分のせいだと言わんばかりに項垂れるラックに何だか逆に申し訳ない気分になってしまう。
ラックは何も悪くなんかないのだから。
「何考えてんだあいつは…」
隣で一連の話を聞いていたレイズはほとほとアレンに呆れ返っていた。
「とにかくもう二度とこんな事がないように船長にはきつく言っておいたから」
ラックやレイズ、この船の乗組員は皆、何かとアレン船長に振り回されている。
この船の乗組員達は結構な苦労人なのかもしれないとあらためて思った。
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