バトル…ロワイアル the Last Program
5[適切な処置](1/18)
「……ッ!!」


「そ……そんな……」


「う………そ……」



揺らぐ視界



震える体



折られた心………



あたしは意識が遠のきそうになる。


じわっ……


また、涙腺が……


「ッ……!!」


必死に堪える。


泣いちゃ……ダメだ。


夏美。


「そんなぁ……桃子さんが死んじゃったなんて…ヒック……イヤだよぅ…………」



八雲 夏美! ここであたしが泣いたら、ダメだ!


泣いたら……桃ちゃんの死を認めてしまう事になる



「ちくしょう………ちくしょう!!」



「……けんじゃ……わよ……」


「……え……?」




「ふざけんじゃないわよ!!!!」



ダアアァァン!!!


思い切り壁を殴る


痛みは、感じなかった。



「あたしは、認めない。

絶対に……!!

この目で確認するまでは!!!


桃ちゃんは生きている。 きっと何とかしてこのクソゲームから脱出してる!!


あたしは…… そう信じてる!



ぐすっ……絶対に……絶対に…………



あの子は死んじゃいない!!
桃ちゃんが………あたし達を置いて殺され……ちゃうなんて事………



絶対にあり得ないんだからぁ!!!!」




ポロポロと零れ落ちる涙。

言葉ではあんな風に言ったけど……自分の体は正直だった。


心の中じゃ……わかってる。


実際にレーダーの反応も消えているんだ。

生きてる確率なんて………ないに決まってる……!!



次から次へと目からその液体が溢れ出てきて……床に染みを作っていく。



「夏美……」


「お姉ちゃん……!」


ギュッ


鈴があたしの方に近づき、その小さな手であたしの手を握りしめた。


「グスッ……えへへ………そうだよね。

桃子さんは……きっと……きっと、大丈夫だよ……


だからお姉ちゃんも……泣かないで?


みんなで、桃子さんを探そ? わたしも焔お兄ちゃんもいるから………


みんなで、ここから脱出して……


またみんなで……一緒に遊ぼ?


だから今は………泣かないで?


わたし達は、お姉ちゃんとずっと……一緒だから……!」


「り……りん………!!」


目に涙を浮かべながら、必死にあたしを元気付けようとしてくれる
その健気な姿は、折れかけた心に染み渡り……潤してくれる。


…………情けないなぁ


あたしの方が、お姉さんなのに……この子にすごく勇気付けられて



表情は、あたしよりもずっと大人に見える。



でも、それでもやっぱり………


「でもね……でも、あたしが……あたしの……!」


「あたしのせいで……とか言ったら、承知しねぇからな。」



頭に乗せられる大きな手。


ワシャワシャワシャワシャワシャ



「う〜〜〜……」


痛い………


でも、何だか落ち着く、焔の手。



「お前は……悪くねぇよ。

悪いヤツなんて、俺らの中には一人もいない。
本当に悪いのは……このクソゲームを作り出した、クソ政府さ。

そんな事でうじうじ悩むなよ。お前は能天気に笑ってりゃいいんだよ!」


「ほ……ほむらぁ……なによぉ……」



「んな顔するなっての!

それに、俺にはわかる!桃子は生きている!

まだ誰も、桃子の死体を見た訳じゃねぇんだからよ、んなクヨクヨすんな!

お前が信じてやらなくてどうすんだよ、桃子の無事を。

大丈夫さ!」
ニカッ



「うん………そうだね……」

……ったく……能天気はどっちよ……



「そうよ……うん。こんなの……あたしのキャラじゃないわよ。

絶対に桃ちゃんと再開して………政府の人を、ついでに貝塚先生を、ぶっ飛ばしてやるんだから!!」


「お姉ちゃん……うん、その意気だよ♪」



「そうそう、うるさくてがさつで乱暴でちっこいのが、夏美だろ!」


「殴ったろか………」



「あ、でもお兄ちゃん、お姉ちゃん。 ここ、もう少しで禁止エリアになっちゃう……そろそろ移動しないと……」


おずおずと鈴が地図を確認しながら言う。


「そっか……そうだね! そろそろ、ここを出ますか!」


「足……大丈夫なのか? おぶるか?」



「ケッコーです! まぁ、まだ少しは痛いけど……足、引っ張る訳にいかないしね。」



「……わかった。


よっしゃ、じゃあそろそろ行くとしようぜ!

桃子と……再開するために。」



「うん!

走って行った方向はわかるから……ついてきて。」


立ち止まってなんかいられない。

例え、再開出来る見込みがなかったとしても。 本当に、死んじゃっていたとしても。


それはあくまで、もしもの話だ。実際に見るまでは。


なら逆の“もしも”もあるかもしれない。


どれだけ闇に覆われようと。

どれだけ絶望が蝕んだとしても。


あたしは、戦う。 諦めない。


一筋でも光がある限り、戦い続ける。


あたし達の、仲間がいる限り。

何度でも立ち上がる。



外に出て、早朝の冷たい空気を大きく吸い込んだ。


空には、白にオレンジ、黒の織り成すコントラスト。


その陰から、朝日が顔を覗かせようとしていた。








その、朝日の下…………






頭から、血を流して





桃ちゃんが横たわっているなんてことは







もちろん、、、知る訳がなかった。



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