LIFE
[家族](1/2)
「お兄ちゃん…私、特殊超能力者だよ」
「もちろん知ってるよ。彩にはこれくらい楽勝か?」
「…うん。」
「バイト先は…洋風の建物のmilkってお店。わかる?」
「…うん。」
「行ける?」
彩が時計を確認したら5分前になってた。
「…うん。」
彩は福武に事情を話しレストを解放してもらう。
「気を付けていくのよ。」
彩と兄は文字通り家を飛び出た。
「お兄ちゃん掴まって…」
彩は自分の肩に兄の手を持っていく。
空を飛ぶ時は慣れていないとバランス取りにくい。初めての人は気持ち悪くなるかもしれないから、支えてあげる。
彩は兄のためにいつもより低めの位置を飛ぶ。
「彩、凄いよ!鳥になった気分!」
「…。」
「周りに彩以外で超能力者は全然いないから…新鮮だよ。」
「そうなの?」
「うん。それは…レストってやつだろ?授業で習った。」
「…うん。これも、それにこれも…」
「可愛いデザインだな。」
彩と兄は雑談をしながら向かっていた。
約1分後彩は兄のバイト先milkの真上に着いた。
「ここ?」
「もう着いたのか?!流石だな…お客さんいなかったら中で下ろしてくれ」
「ん…」
彩はテレポーター特有の空間把握で物の場所とか人の位置を確認する。ケーキの並ぶショーウィンドウの向こう側に1人、奥に1人いるのが見えたが、お客さんは居なさそうだ。
店内にテレポートした。
店内では彩の見立て通り、女の子がショーウィンドウ越しに立っていた。
「達也?!」
いきなり現れた彩と兄に店員の女の子は驚いている。
「美優、内緒だぞ。彩、ありがとな。ちょっと待ってて!」
そう言い残すと兄は裏へ行った。
女性2人はその場に呆然と立ち尽くす。
「あ、あの…」
この沈黙に耐えられず先に口を開いたのは店員の女の子、美優だった。
「…妹です。」
「やっぱり!達也と同じ雰囲気ですね…!私、達也の彼女の美優です。あっ言って良かったのかな?よろしくね。」
可愛らしい笑顔の美優は彩に微笑む。
彩はうんともすんとも言わずじーっと見ていた。
「あ、美優もう紹介したのか?」
「うん。達也がいつも話す妹の彩ちゃんでしょ?すぐわかったよ」
「今のはテレポートってやつ?」
「そうだよな、彩?」
「…うん。」
達也と美優は超能力に疎いようで、珍しいものが見れた、と2人して興奮していた。彩は横目にその様子を見ている。
お店の裏からまた別の男の人が出てきた。
コックコートを着ていた。このケーキ屋さんのシェフだろう。
「あれ?お客さん?」
「店長!俺の妹っす」
「へー。噂通りの美人さんだね。」
「そんなことないですよ。俺からしたら可愛いですけどね」
「達也、ちゃんとお兄ちゃんしてるの?妹さん、ケーキ食べる?」
「してますよ。」
「ありがとうございます…」
「そっかー。美優、適当に詰めてあげて」
「はーい!」
「今は…一緒には住んでないの?」
「そうですね。こいつは東京で1人暮らしです。」
「そうなんだ。あー、なるほど。能力者?」
店長は彩のレストを一瞬見て言う。
「そうです。それで東京に…」
「そうなんだ。所属はどこ?」
「政府管轄機関です。」
「それは良い。東京駅も近いし、達也もすぐ会いに行けるね。」
店長は少しだけ詳しいようだった。
「テンチョー、あのね、達也ね彩ちゃんのテレポートで来たんだよ!」
「テレポーターなんだ?」
「それも…って感じですね。」
「そっか。また名古屋に帰ってきた時はいつでも遊びにおいで。」
彩は静かに頷いた。
「彩ちゃん、お待たせ。人気商品詰めたよ!」
「あ、ありがとう…」
彩はケーキの箱を持って3人に見送られながら会釈をしてお店を出る。
外に出てからテレポートを使い家に帰った。
「ただいま」
「おかえり。」
父親と母親はテレビを見ながら彩の帰りを待っていた。
「お疲れ様。間に合った?」
「うん、ケーキもらった…」
「良かったね。ちょうど甘いものが食べたかったわ。コーヒー入れるね」
母親はお湯を沸かすためキッチンへ行く。
「彩はどれにする?お母さんに内緒で選んじゃおっか」
彩と父親は子供のようにコソコソとケーキの箱を覗き込む。
「モンブランかな…パパは?」
「パパはガトーショコラ。ママはショートケーキでいいな」
母親はコーヒーを持って戻ってきた。
「あら、2人とも先に決めたのね。」
「ママはショートケーキが好きだろ」
「そうね」
「なぁ彩」
さっきの明るい雰囲気とは一転、いきなり真剣な顔で話し出すお父さん。
なんだか、身構えてしまう。
「…な、なに?」
「服脱いでみ?」
「なに?恥ずかしいよ」
「いや、違うんだ。その…傷増えたな。どうした?任務か?訓練か?」
「…色々あって…」
「そうか。…彩…家に戻っておいで。」
父親は何かを堪える表情をしている。
「…!それは出来ないよ…パパ」
「なんでだ?娘が辛い思いして、傷たくさん付けてき…。首や手首足首のも全部レストだろ?そんなたくさんはめられて…。彩は政府のモノなのかっ「お父さん。」」
母親は父親の制止に入る。
彩は父親が言いたいことも重々理解してる。
でも彩は、自分のPowerは制御していて欲しいと感じている。
「パパ、ママ。ごめんね…。」
「…こっちに住みながら東京通えばいいんじゃないか?そういう人もたくさんいるだろ?」
「うん。でも…あ、向こうで友達出来たし…主任もよくしてくれてるし…」
彩は普段からあんまり口数が多い方ではない。
だけど、必死に話してる姿を見て諦めたようだ。
私は実家で過ごすとなると、家族にまで迷惑がかかることを懸念している。実家に迷惑をかけるわけにはいかない…。
「……わかったよ。いつでも帰って来い、辛い時や悲しい時それに…嬉しい時もな。彩ならすぐ来れるだろ」
「…うん。」
彩の携帯が鳴る。福武からだった。
もうすぐ、迎えにくるって連絡だった。
「もうすぐ…主任がくる。」
「あら、もうそんな時間?」
彩と母親と父親の3人は福武を待つ。5分もしないうちに彩の家のチャイムがなった。
「こんばんは。お世話になってます。」
福武はにこやかに挨拶をした。
「福武主任、いつもありがとうございます。」
彩の両親は深々と頭を下げた。
「こちらこそ、いつも心配おかけしてすみません。彩、もう行けるか?」
「…うん。」
「じゃあ、彩。ちゃんと連絡してね。いってらっしゃい。」
「…パパ、ママ。また」
福武と彩は上空に待機していたヘリへと彩のテレポートで乗り込んだ。
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