LIFE
[買い物](1/3)
「彩、起きて」
誰かが彩を眠りから覚ます。
「おはよう、彩」
主任の福武だった。
「…。」
彩は起きてすぐ、自分のいつもと部屋が違う事で昨日のことを思い出した。どうして福武なんだろうと首を傾げる。
「みんな出かけたよ。日曜日だからね。部屋戻るよ。」
福武と彩は彩の部屋へ戻る。
彩は簡単に身支度を整え始めた。
福武は彩の部屋でパソコンで仕事をしている。
彩は身支度を終えると、福武の向かいのソファーに座る。
「あ…」
「ん?」
「予定…」
「すまない。伝えてなかったね。今日の予定はこれから簡単な検査と空中訓練。午後からは基礎体力作り。そのあとは空いてるな。月曜日からの学校の準備を買いに買いに行こう。リスト作ったから送るよ。」
福武は彩のスマートフォンに表を送る。
彩は珍しくちゃんと目を通している。
「じゃあ、今日の検査はB1だな。行こうか。」
彩は福武について行く。
検査室では、大きな機械で身体をスキャンする。
彩は長いスキャン時間でウトウトと寝そうになっていた。福武は検査技師とデーターを見ながら話をしている。
「うん、異常はなさそうですね。ありがとうございました。彩、次は外で訓練だよ。」
彩と福武は検査室を出て、外へ向かう。
彩の場合、空中訓練はいつも陸上で運ぶのが難しい大きなものを届ける宅配業みたいなことがメインだった。
彩と福武が指定された場所に行くと、案の定数台のヘリコプターが止められていた。
「こんにちは!鎌倉さんと福武主任ですね。よろしくお願いします。」
倉庫からは数人の作業着を着た男の人が出てきて彩と福武に挨拶をする。
ここは大きな乗り物を修理する場所のようだ。
奥にはフェリーが止まっているのも見える。
「よろしくお願いします。」
福武は作業着を着た人に挨拶をし、彩はぼーっとしていた。
「こちらのヘリコプター3台ですね。政府管轄機関の東北第4練習場までお願いします。また、そこで別のヘリコプター3台って言ってたと思うんですが…を預かってから次は九州第1練習場までお願いします。」
「丁寧に教えて頂きありがとうございます。こちらも概要は聞いてます。」
「そうでしたか。」
彩はヘリコプターの側に行きじーっと見ている。
女性にしては高身長の彩よりも何倍も大きいヘリコプターだった。
「彩。大丈夫そうか?」
彩は少し頷く。福武も彩にとってこの訓練は簡単なことをわかっているし特に心配はしていなかった。
「…一緒に?」
彩は福武を見る。テレポートが使えない福武を彩が一緒に連れて行くことはよくあることだった。今回もそれを聞いている。
「いや、今日は彩1人の予定。GPSで常に現在地を確認するようにする。適宜指示も出すから安心してくれ。」
「…。」
彩は反応しなかった。
「速さはどうしようか。」
福武はいつの間にか福武の隣に来ていたスーツを着た男と相談を始める。特殊能力者の訓練や任務には通常、何人もの人が関わる。
この人はその1人だった。
「東京から仙台まで約300キロだから、行きは2秒1キロのペースにしようかな。いつもより少し速めで。どうですか?」
「妥当です。」
隣のスーツの男はタブレットを操作し彩の情報を確認しながら答える。
「帰りは栃木辺りで一度休憩。確か…直線上には栃木第2演習場があったと思う。速さは彩のバイタル確認しながら考えましょうか。」
「そうしましょう。」
福武はこの会話は彩にも聞こえていることをわかっていた。何度も説明は不要だと思い改めて彩に説明することはしなかった。
「鎌倉さん。こちらを」
スーツの男からリュックサックを受け取る。彩がよく使っているやつだった。
「…。」
中には、食料などが入っている。
彩はそのリュックを背負う。
「彩。聞いてたと思うけど。一応、レストにも情報送ってあるから。」
彩は腕のレストの液晶画面をタップし、情報が来ていることを確認した。
「…うん。」
「気をつけて行ってきて。途中、飛行機とすれ違わないルート選別してあるから。」
「…うん。」
「レストリリースするから、また連絡して。」
彩はレストが淡く光り、リリースされたのを確認する。解放と言ってもレストそのものを外すわけではなく、超能力を抑制する電波が流れているのを止めるだけだった。
彩はヘリ3台に軽く触れて、重さや大きさを透視する。福武を含めた何人かに見送られ、彩は早々に空へと飛び立って行った。
彩はしばらく無心で空を飛び続けた。風が気持ちいいのか彩は少し解放されたように明るい表情をしている。彩はふと、母親に学校に通うことを伝えていなかったことを思い出した。
なんだか、無性に会いたい気分になってきたようだ。ソワソワと落ち着きをなくす。
10分後、予定通りの時間に彩は東北第4練習場に着いた。
「こちらにおろして下さい!」
下を見ると整備士が旗を振って彩を誘導する。
彩はテレポートを止め、サイコキネシスで浮きながら旗の方へ行く。
「ここで大丈夫です。お疲れ様です。」
広い倉庫にヘリを置いた。
「…お疲れ様です。」
彩は倉庫にヘリを残し、福武に連絡する。
『お疲れ様。流石、時間通りだ。ルートも正確だったよ。』
「うん…」
『休憩は?中に休憩室があるだろうから少し休むと良いよ。』
「うん…あっ」
『どうした?』
「帰り…実家寄ってもいい?」
『あぁ、そうだね!ついでだから、買い物も親御さんとしてきたらどう?午後からは…基礎体力作りがそれは大丈夫。』
「うん。ママに電話する…」
『わかった。また、どうなったか教えてくれるか。』
彩は中の休憩室へ行き、椅子に座る。
リュックサックからお茶を取り出し飲んでから母親に連絡を取る。
『もしもーし。彩?どうしたの?珍しいわね』
「今日帰っても良い…?」
『…いきなりね。訓練って言ってなかった?』
「うん。終わってから…」
『そうなのね!何時ごろに着きそう?』
「…わかんない。」
ここから九州第一訓練場までは約1400kmある。行きよりも倍のペースでテレポートすれば30分くらいで九州に着く。こそから愛知まで戻る必要がある。
「多分40分から50分くらい…。」
『わかったわ。気を付けてね。おうちで待ってて良いの?名古屋支局まで迎えに行こうか?』
「…だいじょーぶ」
彩は母親との電話を切り、福武にかける。
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