神様の巫女
[第3章 巫女の契り](1/6)




「あ! あ! あ! ああ天照の





「「「「「むすこぉおおおおおおお?!!??!」」」」」




 秋花は鹿目を渋々山へ連れて帰るなり、妖達に事情を話した。

 彼らが驚く事は無理もない事。今までこの山を訪れる神は、依頼屋の顧客とこの山神の友神以外誰もいない。
 そして、顧客の中でも彼のような位の高い神は、誰一柱としていない。

 彼の物珍しさに興奮気味な妖達と、彼に対し不信を募らせる妖達に囲まれる中、彼は終始微笑んでいた。
互いに素性を知らない、襲われる可能性も0ではない妖達の前で、笑っていたのだ。



「神が、それも天下の天照の倅【せがれ】が一体ウチに何の用だい?」



 不審な目を向けながら、菫が言った。



「僕はお嬢との関係も是非ともお伺いしたいものです」



 続けて、秋花との恋仲を疑う輝がメンチを切りながら問い詰め始めた。
 二人に関しては今に手が出ても、おかしくない形相である。
 そんな状況で、鹿目はとんでもない事を口走った。



「今回訪問したのは、貴方方の大切な娘 秋花さんを貰い受けたく、参上した次第」



「「「「「「……は?」」」」」」


「へ……?」



 秋花を含めたその場全員が、言葉を失った。

 堂々と毅然とした態度で告げた鹿目は、その反応を予想していたと言わんばかりに艶やかにクスリと笑った。

 しかし誰一人として、その嘲笑に反応する者はいなかった。全員が全員、素直に鹿目の言葉を理解する事が出来ず、呑み込むのに随分時間がかかった。



「ちょ、ちょっと! お嬢! どうゆう事だい!」



 秋花の肩を揺さぶり、菫は気が動転した様子で荒々しく問い質した。しかし、問い詰められたところで当の本人も理解が追いついていないため、何も答えられない。



「私も何がなんだか……というより、私が一番驚いています」



 何故このような事に至ってしまったのか。
 いくら考えたところで、皆この神の思考に辿り着く事が出来なかった。理解出来ない彼の言動に現場は混乱し、次第に鹿目には非難の嵐が降り注いだ。



「お、お嬢をもらうだぁ?!」


「何故お嬢を渡す必要があるのですか!」


「返品不可の条件なら半額で渡してやっても良い」



 どさくさに紛れた刃にも、同様に皆から制裁【稲光】が降った。四方八方から集中豪雨【リンチ】を一斉に浴びた後、彼は暫くの間は帰らぬ人となった。



「良い度胸しているじゃないのさ。妖だらけの屋敷に単身で乗り込み、娘を寄越せだぁ? 悪いがここは遊廓じゃないんでね。身請け話ならお断りさね!」



 鹿目に対し、菫は強気にそう断った。
 一介の妖が、皇族に楯突くなど前代未聞も良いところ。本来なら、この時点で菫の首が飛んでいてもおかしくないほどの緊張状態である。

 すると丁度、遠くの方から足音が忙しく、この緊張下の部屋に向かってくるのが分かった。廊下を裸足で駆ける音……子供にしては少し足音が重く、大人にしてはあまりにも軽過ぎる足音が段々とこちらへ近づいてきた。



「あーあ、漸くお出ましかい」


「厄介な方が増えてしまいました。誰ですか? 呼んだのは」


「どうせ子ども達でしょう」


 音を聞くなり、皆飽きれたように頭を抱えた。



「秋花〜〜〜!!

 





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