ブラックレター

う わ さ



 『ブラックレター』



 最近俺の周りで、良くその言葉を耳にする。巷ではちょっとした噂になっているらしい。


 事の発端は、ネットにあった一つの書き込みだった。


 その内容を大間かに言うと、



 ――ある日、自分の友人の家に、突然黒い小さな手紙が届く。差出人は不明で、外側には何も書かれていなかった。


 何かと思い開けてみると、中からこれまた真っ黒な便箋が出てくる。そこには、



「お前は、三日後に死ぬ」



 真っ赤な字で、強い強い筆圧で、ただそれだけ書かれていた。


 ただのイタズラだろうと思っていた友人だったが、


 その三日後。


 予告通り、友人は本当に死んでしまった。



 ――と、言う事だった。


 それがいつの間にかネット上で広まり、いろいろ後から噂が付け足されて拡大し、今では憎しみのブラックレターなんて名前までつけられる始末。


 もう軽い都市伝説みたいになっているのだから、噂とは中々怖いものだと思う。


 現在のブラックレターの定義だと、何でも、自分を一番憎んでいる人間から送られて来て、そこに書いてある事が現実のものとなるらしい。


 つまり。


 三日後に死ぬと書いてあれば、本当に三日後に死んでしまう。


 大怪我をすると書いてあれば、何かしらで怪我をする。


 勤めている会社が倒産とあれば、跡形もなく会社はなくなる。


 単純なようだけれど、結構恐ろしい話だと思う。


 自分を一番憎んでいる人間。その感情がどれ程のものかは分からないけれど、少なくとも、相手側が望んだようにこちらは従うしかない。


 自分にとっては最悪の呪い。相手にとっては最高の憂さ晴らし。全てにおいて相手側が有利過ぎる。


 全く、とんだ復讐もあるもんだ。






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