ぼくの住処
◎[知ってはならぬ](1/17)
「翔悟っ!」
校庭を貫く煉瓦道を走りながら呼ぶ。
左手に見えるサッカーコートではユニフォームを着たサッカー部員が帰り支度をしているところだった。
そこに旭と斗真の姿は無かった。

が、しかし
「おい、どうした?」
ふいに呼び止められてスピードを緩め立ち止まると、斎木先輩がいた。
「なんだ、須崎だっけお前。何だよ、どうした?血相変えて。」
斎木先輩はユニフォーム姿ではあるものの足の捻挫が響いているらしく、他の部員が片付けをしている中離れたベンチの横で汗を拭くのに使ったのだろうタオルをまとめているところだった。

「斎木先輩、さっきから待ち合わせている友人が10分待っても中々現れなくて…。駐輪場まで探しに向かうところだったんです。」
訳を話すとピリッと表情を引き締めて頷いた先輩。
「そいつ、一人だったのか?」
「はいっ。」
「俺も同行するぞ。この時間駐輪場周りは人気もなくて灯りも乏しい。―蒼葉!」
頼もしい申し出をしてくれた後に自分の背後でボールを整備していた男に向かって声をあげる。
「何だ?」
斎木先輩と同じ2年生だろうか。
返事をした彼は大柄でのっそりとした動作で巨大な熊を連想させるような体つきの大男だった。
「Bだ。こいつに同行して学内を探してくる。今から10分経っても着信が鳴らない場合はCに移行。人員を集めて動け。」
「ラジャー。」
「うし、行くぞ!」
唐突に目の前で訳のわからない会話が繰り広げられたかと思うと、斎木先輩はぼくの肩を軽く叩いて先陣を切って走り出した。
向かう先は駐輪場。
ぼくの言葉に斎木先輩も何か不穏なものを感じ取ったようだった。

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