ぼくの住処
◎[太陽は落ちて](1/29)
入学して初めての週末。
同室でクラスメイトの旭と共に過ごした。
朝から自主練習に出ていた旭は疲れを顔にも態度にも出さず、まだ地理に慣れていないぼくを連れて買い物へ連れ出してくれた。
駅前までを徒歩で移動してそこから出ているシャトルバスでショッピングモールへ行った。
家族連れやカップル、学生数名のグループでモール内は賑やかに込み合っていた。
ぼくは目当ての勉強道具や私服、部屋で使うための食器を買い込んだ。
海外に駐留している養父に送るためのレターセットも買った。
その後は旭のスポーツ用品の新調に付き合ったり、ランチをモール内のフードコートで食べたりと楽しく過ごし、土曜日は過ぎていった。

そして日曜の夜。いま現在、ぼくが何をしているかというと…。

「ご使用の前に肘の内側でパッチテストを行い…痒みなどの異常が見られた場合にはすぐにご使用を中止して…。
ねぇ旭〜パッチテストってなんだろう〜?」
「はぁ?何をしてるんだ?」
共有スペースのリビングでソファにごろ寝してテレビ鑑賞中の旭に向かって声をかける。
二人とも夕飯はもうとっくに食べ終えて、絶賛寛ぎタイムだ。
洗面室から小箱を手にとって出ていったぼくの姿に旭は怪訝そうな顔をする。
「ここに使用の前にって注意書があって…」
「お前髪染めるのか?なんでまた?」
言葉を遮って旭が驚いた声を上げる。
ぼくが持っている小箱には明るめの茶髪を煌めかせたモデルがこちらを見上げていた。
商品名には「シャイニー★アッシュブラウン」と書かれていた。
アッシュと言うことは灰色になるんだろうか。

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