ぼくの住処
◎[プロローグ](1/5)
その日ぼくの人生は終わりを告げた。
急転直下。
あまりにも突然にぼくの自由は奪われた。
星の光しか宛の無い夜の闇の中、ぼくは悲鳴を押さえられない口を布で塞がれて乱暴に背中に担がれ外国人の男に連れ去られた。
両親と弟と訪れていた中東のとある街。
その街でぼくは誘拐された。
その日、その時をもってぼく
とおしま さつきは死んだ。
昼の光の届かない、夜よりもずっと深い闇の世界。
そんな世界に突如として訳もなく
落とされたのだった。
両親にも兄弟にも会えなくなった。
一人になった。

自由を奪われたぼくに与えられたのは恐怖と暴力だった。

言葉の通じない肌の色も違う大人達。
鋭い眼差しに曝されながらどうにかこうにか生き永らえるために恐怖と暴力に耐え続けてきた。
大人達はまずぼくに銃器を与えた。
身ぶり手振りでたまに殴られもして操作を仕込まれた。
ぼく以外にも子供はたくさんいた。
でも日本人はぼく以外には一人もいなかった。
みんな感情の無い人形みたいな目をして黙々と銃器を組み立てたり弾を装填したりしていた。
中にはぼくよりも年上だろう少年がいて、誰もが体の何処かを失っていた。
手首だったり、太ももから下だったり色々だったが誰もがそれが当たり前の事のように振る舞っていた。
そこは今までぼくが暮らしてきた場所とは全く別の世界だった。

死なないために生きてきた。
生きるために殺してきた。
何故かって。
殺されないためには殺すしか道はなかったから。

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