………銀行前………
銀行前は警官隊や報道陣……そして多くの野次馬達によって騒然としていた。
警察車両や報道陣の車両により銀行は完全に包囲されてはいたが……警察は決め手に欠いていた。
警官隊を指揮する二ノ宮大和(にのみややまと)警部は、緊張感のある現場で少し苛ついた様子を醸し出していた。
黒のスーツを身に纏い、ボサボサの髪を掻きむしりながら二ノ宮はぼやいた。
「金が集まる給料日を狙いやがって……しかも悠長にピザなんか要求するたぁ……ナメやがって……」
すると二ノ宮の部下でもある木下(きのした)刑事が、二ノ宮の元へと駆け寄ってきた。
「警部っ!」
「何だ?……」
「ピザが届きました……」
「そうか……犯人に連絡は?」
「先程連絡をしましたが……人質の一人が受け取りにくるようです」
「チッ……やはりそうきたか……。後は……犯人が約束通り一部の人質を解放するかどうか……」
「警部………」
二ノ宮は警官隊に指示を飛ばした。
「ピザの受け渡しをするっ!人質が解放されるまで、警戒は怠るなっ!!」
「はっ!!!」
二ノ宮の怒鳴りに警官隊の背筋が伸びる。
すると銀行正面入口のシャッター横の小さな扉から、スーツ姿の男が出てきた。
「けっ、警部っ!あれっ!」
焦った様子の木下に、二ノ宮は不快な表情をした。
「うろたえるなっ!受け取りに来た人質だろう……ピザを用意しろっ!」
二ノ宮は木下にピザを持たすと、木下を連れてその男の元へと向かった。木下は高く積み上げられたピザを、必死の形相で持ち、二ノ宮について行った。