蝶々遊び。
○[“ちぃ”と呼ぶ声。](1/26)
―――――
「ごちそうさま」
「は、い……」
――あのどうしようもない空気をくぐり抜け、
いつもの視聴覚室にやってきた私達は。
いつものように、私の作ったお弁当を食べた。
……実は私、今朝家に帰ってシャワーを浴びてから簡単にお弁当を作ってたんだよね。
そうして。
大して会話をすることもなくお弁当を食べ終わった先輩は……
「じゃ、おやすみ」
「おやすみなさい……」
……今日もまた、
いつものように私を抱き締めて眠りだした。
甘い甘い香水の香りと
ふんわりと香る苦い煙草の匂いも、
いつもと変わらない。
昨日の先輩からは香らなかった甘い香りが……
……私の思考回路を狂わせる。
優しくて暖かい両腕に
包み込まれながら、
ただただ瞼を閉じていた。
だけど龍星先輩は……
どうしてこんなに
いつも通りなんだろう。
まるでさっきの事が
何事も無かったかの様な態度に、
漠然とした不安が広がる。
だから私は……
「ね、先輩。
……起きてますか?」
「…………ん?」
「聞いても……いいですか?」
……聞かずには、
いられなかった。
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