蝶々遊び。
○[罠。](1/2)
 




『ちぃ、おいで』




甘く優しく、まるで囁くように。



あなたは私の身体を引き寄せ、いつもと変わらず抱き締める。



包み込まれるのは、むせかえるような甘い香水の香りに……苦い苦い、煙草の香り。




だけど、私は気づいてるんだ。

知ってるんだ。



あなたが、その香りの下に隠している、恐ろしい程の血の匂いを。




わざとキツメに付けた香水は、その匂いを隠すためなんでしょう?


私を、怖がらせないタメに。




でも、ごめんなさい。


隠したって、分かってるんだ。

だって、見えてるんだもん。




……あなたのその、服の裾に付いてる……



……大勢の人の、血の跡が。




 

- 1 -

前n[*]|[#]次n
/505 n

⇒しおり挿入


⇒作品レビュー
⇒モバスペBook

[編集]

[←戻る]