蝶々遊び。
○[罠。](1/2)
『ちぃ、おいで』
甘く優しく、まるで囁くように。
あなたは私の身体を引き寄せ、いつもと変わらず抱き締める。
包み込まれるのは、むせかえるような甘い香水の香りに……苦い苦い、煙草の香り。
だけど、私は気づいてるんだ。
知ってるんだ。
あなたが、その香りの下に隠している、恐ろしい程の血の匂いを。
わざとキツメに付けた香水は、その匂いを隠すためなんでしょう?
私を、怖がらせないタメに。
でも、ごめんなさい。
隠したって、分かってるんだ。
だって、見えてるんだもん。
……あなたのその、服の裾に付いてる……
……大勢の人の、血の跡が。
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