甘いもの好きな高橋くん
ドーナツ(1/10)
「…というわけで、明日から春休みに入るわけだが、くれぐれも気をつけて過ごすこと。
事故なんかにあって俺を呼んだりするんじゃないぞ。
せっかくの休日がお前らなんかのために潰されるのはかなわんからな。」
「先生、サイテー!」
「うるさい。さて、連絡事項ももうないし、帰れー!」
とても雑なホームルームが終わり、皆競うように教室から出て行く。
皆どこか浮き足立っていて、はしゃいでいる。
当然だ。
だって明日から待ちに待った春休みなんだから!
「茜、帰ろー!」
「うん!いやー、明日から春休みなんてテンション上がるねー!」
「それな。明日から何か予定とかある?」
「うーん、とりあえず短期のバイト見つけたからそこでお金稼ぐかなぁ。
美優は?高橋くんと何か用ないの?」
「何で高橋くんなの、何にもないってば。」
「そんな事言って、毎日電話とかしてるんじゃないの〜?」
「ナイナイ。」
茜はことあるごとに高橋くんの名前を出して私をいじろうとしてくる。
そういうんじゃないのに…。
私は高橋くんのことをそういう風に見たことはないし、むしろ嫌いだし、どうすれば好きになれるのか逆に教えていただきたい。
「でも茜、バイトするのかー。
なら春休み遊んだり出来ないかもね。」
「ゆーて休みあるし、イケそうな日は連絡するよ。
美優も基本暇っしょ?」
「うん、まーひー。」
「何それ、ダサっ。」
ぷぷぷーと茜が笑う。
その笑い方もダサいから。
靴箱の所まで降りるとそこには丁度帰ろうとする高橋くんと飯田くんが居た。
スルーして靴を履き替えようとすると、茜は私を追い越して2人に駆け寄った。
「高橋くん!千秋くん!」
「……。」
「あぁ、えっと…名前、何だったっけ?」
「都甲です!」
名前を忘れられてもめげずに自己紹介をする。
こういう所見るとかっこいいなーなんて思っちゃうんだよね。
「ああ、都甲さん…。」
あ、この人やばい。
数分後には名前忘れてるって顔してる。
「今帰り?」
「うん、そうだよ。今日は駅前のドーナツ屋さんに千秋と行こうと思って。」
「駅前のドーナツ屋さん?
そんなのあったっけ?」
「この間見つけたんだ。
2人も来る?」
「えー、行
「きません!用事あるんで!ね!?」
急いで茜の口を塞ぎ、目で圧をかける。
茜は不服そうだったが渋々頷いた。
何が悲しくてこの4人でドーナツを食べに行かなきゃなんないのよ。
絶対に嫌だから!
絶対空気お通夜だから!
「そうなの?用事って何?」
「えっ!?え、と…あの…か、買い物!
春物のスカートが欲しいなぁって思ってさ、今日半日だったし茜と買いに行こうかなって。」
「それ、明日じゃ駄目?
僕、どうしてもそのドーナツ屋のドーナツを鶴田さんに食べてもらいたいんだけど。」
「は?」
いや、意味分かんない。
何で私に食べさせたいのよ。
怖い怖い、何か裏があるんじゃないの?
「ねぇ、美優。スカートなんて明日でもいいじゃん。
高橋くん達とドーナツ食べに行こーよ!」
「いや、でも…。」
「ほら、早く履き替えて!
高橋くん、私達も食べに行くー!」
「ありがとう。」
あれよあれよと行く事が決まってしまい、いつの間にか履き替えていた茜に催促される。
え、ちょっと待って、え?
これ、本当に行くの?
私、ちゃんと行かないって断ったよね?
え?
なにこれ。
この世界には私に発言権は無いの?
差別?
差別なの?
「ドーナツ、ドーナツ♪
楽しみだなー!」
…あれ?
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